「食品表示を考える市民ネットワーク活動報告書 私たちの10年」を発行しました。

 2021年3月3日、「食品表示を考える市民ネットワーク活動報告書 私たちの10年」を発行しました。より多くのみなさまに食品表示の現状と課題を伝えたいとの思いから本書を作成しました。

 本書をPDFとして3つに分けて掲載します。ご活用いただけましたら幸いです。なお報告書の販売はしておりません。


食品表示を考える市民ネットワーク活動報告書 私たちの10年

表紙・目次・1~5ページ

6~24ページ

25~40ページ・構成団体・裏表紙

目次

はじめに 1

消費者庁創設から食品表示一元化検討会までの経緯 2

食品表示を考える市民ネットワークの活動 成果と課題 4

個別課題について

1.加工食品の原料原産地表示制度について  6

2.遺伝子組換え表示制度について  9

3.食品添加物表示制度について 13

4.機能性表示食品制度について 16

5.製造所固有記号について 19

6.その他の課題について  21

役割を発揮しない消費者委員会  23

まとめと提言 25

参考資料

①食品表示一元化検討会 報告書概要  27

②食品表示法・食品表示基準  28

③食品表示ネット活動歴 要望書・意見書提出一覧表  35

食品表示を考える市民ネットワーク構成団体

報告書作成メンバー

 

 本書より はじめに  

 食品表示は、消費者が食品を選択する際の重要な手段です。アレルギーなど安全性にも関わる問題です。表示は、消費者の知る権利、選択の権利を確保するためのものでなくてはなりません。消費者の権利は1962年にケネディ大統領により提唱された4つの権利が最初です。

 ①安全である権利 ②知らされる権利 ③選択できる権利 ④意見を反映させる権利

 さらに消費者教育を受ける権利が追加され、現在は、1980年に国際消費者機構が追加した「生活の基本ニーズが保障される権利」「救済を求める権利」「健康な環境を求める権利」を含め、消費者の8つの権利と呼ばれています。

 しかし日本では、消費者基本法においても、これらの権利は単に尊重されると書かれているだけで、正面から権利があると明記しているのは、東京都消費生活条例しか存在しません。

 食品表示を考える市民ネットワークに参加する団体及び個人は、食品の安全性や食品表示の問題に対し、関心を持ち運動を重ねてきました。

 2009年に消費者庁が設置され、食品表示一元化の動きが始まるのに合わせて、2011年3月、食の安全・監視市民委員会と主婦連合会は、連名で「食品表示法案要綱案」を消費者庁長官宛に提出しました。この要綱案では、消費者の知る権利・選択の権利の確保を目的としていますが、対応した消費者庁担当者の回答は、「消費者の権利を認めた裁判例があれば、食品表示法の目的を消費者の権利確保とすることができる」との的外れのものでした。裁判は法律に基づいて行われるもので、法律の無いうちに、権利を認める判決が出るはずはありません。

 2011年11月11日、私たちは食品表示を考える市民ネットワークを発足させました。その経緯と活動報告は、以下各章にまとめてあります。また課題別・テーマごとに活動報告・残された課題への提言も以下にまとめています。2013年6月に成立した食品表示法は、非常に不十分なもので、法律に基づいた食品表示基準も不十分でした。しかもその表示基準さえ、消費者庁次長通知で形骸化されました。

 法制定後、加工食品の原料原産地表示・遺伝子組換え表示・食品添加物表示につき検討会が設けられましたが、その内容も不十分なものでした。私たちの活動が10年を迎えるにあたり、これまでの活動を振り返り、さらに充実させるべき問題点を報告書にまとめることにしました。

 多くの皆様に読んでいただき、今後の活動の参考にしていただけるとありがたいと考えています。

2021年3月3日

食品表示を考える市民ネットワーク代表 神山美智子

6/16メディア懇談会『加工食品の原料原産地表示と遺伝子組み換え食品表示の問題点と考え方』を発表

2017年6月16日 連続メディア懇談会⑰ご案内『食品表示基準改正案の問題点 加工食品の原料原産地表示と検討が始まった遺伝子組み換え食品表示への考え方』を発表します。

2017年3月27日~4月25日まで、食品表示基準の一部を改正する内閣府令案に対する意見募集が行われました。その後、6月8日に消費者委員会食品表示部会が開催され、一部変更された食品表示基準案が消費者庁より提示されました。

食品表示を考える市民ネットワークでは提示された加工食品の原料原産地表示改正案について、その内容と問題点を整理しどうすべきかを発表します。また、4月に消費者庁で検討が始まった遺伝子組み換え食品表示についての考え方を公表したいと思います。

ぜひ、ご参加いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

日時:2017年6月16日(木)15:00~16:00

場所:主婦連合会会議室(主婦会館3階) JR四ツ谷駅前

講師:神山美智子 (食品表示を考える市民ネットワーク)

【お問い合わせ】 食品表示を考える市民ネットワーク事務局

電話 03-6869-7206  FAX 03-6869-7204  Email info@nongmseed.jp

2017年6月11日 | カテゴリー : その他 | 投稿者 : admin

 「製造所固有記号」市民による実態調査(6月13日~24日)報告

2014年製造所固有記号市民調査活動票

「製造所固有記号は一刻も早く廃止し、製造者名及びその住所を記載する表示制度とすることを求めます」

食品表示を考える市民ネットワークは6月中旬、レトルトカレーとレトルトミートソースの製造所固有記号を対象に、試買調査及び事業者聞き取り調査などの緊急調査に取り組みました。
調査では、事業者によって製造所固有記号の趣旨を踏まえずに記載方法を使い分けている例があること、「企業秘密」と称して消費者からの問い合わせに応じない例があること、結果的に食品の事故の再発防止や安全性確保に役立たないばかりか、産地偽装や都合の良い価格設定の隠れみのに悪用される可能性あること、総じて、製造所固有記号が消費者の「安全の権利」「知らされる権利」「選ぶ権利」など「消費者の権利」を侵害するものであること、などが明確となりました。
また、アクリフーズの農薬混入事件以降、消費者の製造所固有記号に対する考え方は変わったと思われます。
食品表示を考える市民ネットワークでは、今回の調査結果に基づき、食品表示法に明記された「消費者の権利の尊重」という理念に立ちかえり、早急に製造所固有記号を廃止し、製造者名・製造所所在地の記載を義務付ける制度へと改善することを求めます。

★調査概要★
■ 調査対象品  レトルトカレー・ミートソース食品
■ 調査期間  2014年6月13日~24日
■ 販売店  都内スーパー、百貨店、生協店舗等
■ 調査品目  76個
Ⅰ.レトルトカレー・ミートソースの試買調査で判明したこと
▼表示調査結果
1. 製造者名とその所在地が書かれていても、本社の住所が多く、製造所の所在地ではないことが多い。
2. 製造所固有記号を使わずに、製造者名と製造所所在地の両方を記載する商品もある。
3. 製造所固有記号が販売者の名称の次に書かれている場合、表示は印刷されており、消費者庁が言う「包材の共有化という事業者のメリットを維持する観点」、つまり同じ表示(包材)を製造所固有記号が違う2つ以上の工場で共有化して使用することはできないと思われる。
4. 製造所固有記号が一括表示欄外や賞味期限の横等に書かれている場合は、同じ表示(包材)を2つ以上の工場で共有使用できると思われる。
5. しかし、今回の調査では同じ食品で違う製造所固有記号はなかった。つまり、同じ食品を2つ以上の工場で製造している実態はつかめなかった。
6. また、レトルトの場合、「表示面積が小さいため、製造者と販売者を併記できない」とは言えないのではないか。
7. 一括表示の欄外に「製造地」として「○○県」とのみ記載している商品もある。

▼事業者聞き取り調査結果
(食品表示を考える市民ネットワークのメンバーがレトルトカレー包装に記載されている「販売者」あるいは「製造者」の連絡先に電話し、その内容を聞き取ったもの)
1. 食品表示を考える市民ネットワークのメンバーからの電話の質問に対し、最初は少し驚く対応を見せるものの、ほとんどの事業者が製造者及びその所在地(一部の場合あり)を回答した。
2. しかし中には、「当社が責任をもって作っているので製造者名は答えられない」「企業秘密であり教えられない」などと言って回答を拒否する事業者もあった。
3. また、所在地については、県または市までしか言えません、とし「県」または「市」までしか答えない事業者もあった。
4. A社が「販売者」となり、B社が製造した商品をA社のPB(プライベート)商品として複数種類販売している場合には、製造者名とその所在地を記載している商品と製造所固有記号のみを記載している商品の2種類があり、統一性がみられないものもあった。2種類の記載方法を採用している理由として「販売者」は、「製造者の要求により、そのようにしている」と回答した。
一方、製造者のホームページには、PB商品と同種の企画商品の紹介があり、当該商品の価格は、販売者のPB商品に比べ、2倍以上の価格差があった。
5. 販売社名の次に製造所固有記号が書かれている場合と賞味期限の横に製造所固有記号が書かれている場合があり、統一性がみられないものもあった。その理由を質問したところ、「記載場所が違う理由はわからないが、固有記号が同じなら同じ工場で製造している」と回答。
6. 販売者に製造者名と所在地を聞いたところ、製造者と工場所在地の市まで回答。しかし、その製造者のホームページを見ると、公開している工場の所在地が違うこともあった。
7. 製造所固有記号をはじめ、「販売者」の電話番号の記載もなく、簡単に問い合わせができない商品もあった。

■製造者の住所を「県」までしか回答しない事業者=ヱスビー食品株式会社
■製造者の住所を「市」までしか回答しない事業者=ハウス食品株式会社、合同会社西友、株式会社良品計画、マルハニチロ株式会社
■製造者名を「当社が責任をもって作っているので答えられない」と回答した事業者=丸美屋食品工業株式会社
■製造者名を「企業秘密」として回答しない事業者=ヱスビー食品株式会社、ハチ食品株式会社、株式会社エクス
■製造者名を「教える必要がない」として回答しない事業者=だるま食品株式会社
■質問・苦情は販売者が回答する=ハチ食品株式会社
■電話番号が記載されていない=レインボー食品株式会社、株式会社ニチレイフーズ、有限会社松蔵、株式会社ナチュラルハウス、株式会社木の屋石巻水産
Ⅱ.総合的結論
1. 製造所固有記号は、消費者にとってはこのままでは意味不明の表示である。
2. 「製造所固有記号に関する手引き(Q&A)」には、「消費者等から製造者及び製造所所在地についての問い合わせがあった場合には、すぐに回答できるよう、既に届け出ている製造所固有記号を一覧にまとめ、問い合わせ窓口に備えておくなどの対応が必要です」とあるにもかかわらず、「答えられない」「企業秘密」「教える必要がない」と言って回答しない事業者もいる。
3. 電話をかけると、ほとんどの事業者が製造者及びその所在地を教えてくれるが、中には、所在地の県または市までで、詳細は教えてくれない事業者もいる。
4. PB商品の中には、「レトルトカレー」だけの分野でも数種類の商品を同一メーカーに委託製造している例があり、その場合は、その製造者・製造所所在地を記載している商品と、記載していない商品があった。同一委託メーカーによるPB商品であっても記載方法に統一性がなかった。
5. 「販売者」の連絡先すら記載していない商品があった。
6. 上記のことを踏まえると、製造所由来の事故が発生し、その商品が流通している場合には、消費者は自ら当該商品を特定することが困難であることがわかった。
7. 購入時には、製造者及び製造所所在地が不明のために、消費者は生産地を知ることができず、現行表示は、産地について誤認したまま購入する可能性を与える制度であることもわかった。
8. 従って、現状では、消費者の「知らされる権利」「選ぶ権利」など、「消費者の権利」が確保される保証はなく、これを確保するには製造所固有記号を廃止し、製造所およびその所在地の記載を義務付ける必要性があることがわかった。

以上

 

 

 

 

2014年7月4日 | カテゴリー : その他 | 投稿者 : admin