「食品表示を考える市民ネットワーク活動報告書 私たちの10年」を発行しました。

 2021年3月3日、「食品表示を考える市民ネットワーク活動報告書 私たちの10年」を発行しました。より多くのみなさまに食品表示の現状と課題を伝えたいとの思いから本書を作成しました。

 本書をPDFとして3つに分けて掲載します。ご活用いただけましたら幸いです。なお報告書の販売はしておりません。


食品表示を考える市民ネットワーク活動報告書 私たちの10年

表紙・目次・1~5ページ

6~24ページ

25~40ページ・構成団体・裏表紙

目次

はじめに 1

消費者庁創設から食品表示一元化検討会までの経緯 2

食品表示を考える市民ネットワークの活動 成果と課題 4

個別課題について

1.加工食品の原料原産地表示制度について  6

2.遺伝子組換え表示制度について  9

3.食品添加物表示制度について 13

4.機能性表示食品制度について 16

5.製造所固有記号について 19

6.その他の課題について  21

役割を発揮しない消費者委員会  23

まとめと提言 25

参考資料

①食品表示一元化検討会 報告書概要  27

②食品表示法・食品表示基準  28

③食品表示ネット活動歴 要望書・意見書提出一覧表  35

食品表示を考える市民ネットワーク構成団体

報告書作成メンバー

 

 本書より はじめに  

 食品表示は、消費者が食品を選択する際の重要な手段です。アレルギーなど安全性にも関わる問題です。表示は、消費者の知る権利、選択の権利を確保するためのものでなくてはなりません。消費者の権利は1962年にケネディ大統領により提唱された4つの権利が最初です。

 ①安全である権利 ②知らされる権利 ③選択できる権利 ④意見を反映させる権利

 さらに消費者教育を受ける権利が追加され、現在は、1980年に国際消費者機構が追加した「生活の基本ニーズが保障される権利」「救済を求める権利」「健康な環境を求める権利」を含め、消費者の8つの権利と呼ばれています。

 しかし日本では、消費者基本法においても、これらの権利は単に尊重されると書かれているだけで、正面から権利があると明記しているのは、東京都消費生活条例しか存在しません。

 食品表示を考える市民ネットワークに参加する団体及び個人は、食品の安全性や食品表示の問題に対し、関心を持ち運動を重ねてきました。

 2009年に消費者庁が設置され、食品表示一元化の動きが始まるのに合わせて、2011年3月、食の安全・監視市民委員会と主婦連合会は、連名で「食品表示法案要綱案」を消費者庁長官宛に提出しました。この要綱案では、消費者の知る権利・選択の権利の確保を目的としていますが、対応した消費者庁担当者の回答は、「消費者の権利を認めた裁判例があれば、食品表示法の目的を消費者の権利確保とすることができる」との的外れのものでした。裁判は法律に基づいて行われるもので、法律の無いうちに、権利を認める判決が出るはずはありません。

 2011年11月11日、私たちは食品表示を考える市民ネットワークを発足させました。その経緯と活動報告は、以下各章にまとめてあります。また課題別・テーマごとに活動報告・残された課題への提言も以下にまとめています。2013年6月に成立した食品表示法は、非常に不十分なもので、法律に基づいた食品表示基準も不十分でした。しかもその表示基準さえ、消費者庁次長通知で形骸化されました。

 法制定後、加工食品の原料原産地表示・遺伝子組換え表示・食品添加物表示につき検討会が設けられましたが、その内容も不十分なものでした。私たちの活動が10年を迎えるにあたり、これまでの活動を振り返り、さらに充実させるべき問題点を報告書にまとめることにしました。

 多くの皆様に読んでいただき、今後の活動の参考にしていただけるとありがたいと考えています。

2021年3月3日

食品表示を考える市民ネットワーク代表 神山美智子

2/12 機能性表示食品に対する事後チェックの透明性の確保等に関する指針(案)への意見を提出

 消費者庁は機能性表示食品に関して、法執行の方針の明確化を図るため、機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針(案)を作成し意見募集(1/16~2/14)を行いました。食品表示を考える市民ネットワークは消費者庁へ2月12日に意見を提出しました。

機能性表示事後チェック指針概要

機能性表示食品に対する事後チェックの透明性の確保等に関する指針(案)への意見 2月12日

■P1 本指針の目的

 指針案では、事後チェックの透明性を確保することが届出事業者や業界のためになるとし、それによって消費者の自主的かつ合理的な商品の選択の機会を確保すると記載されています。しかし、これだと、事後チェック指針による消費者の権利の保障は間接的なものとなり、消費者の選択する権利の尊重があいまいとなります。従ってその対応として、事後チェック指針は、消費者の権利を尊重するものであると明確化し、またその実効性確保のために、「事後チェック項目に適合しない機能性表示食品の販売が確認された場合は、事業者は事後チェックの結果を公表し、販売を中止するなど消費者の権利の確保を重視した措置を講ずること」という文言を付記すべきです。

■P1 第1 機能性表示食品の科学的根拠に関する事項

1 基本的考え方

 文章の最後に、「すでに販売されている商品で、事後チェック指針に違反していることが判明した場合、事業者は速やかに一般消費者に公開すること」という文章を付記すべきです。

■P3 (3)最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー

ウ 研究レビューにおける成分と届出食品中の機能性関与成分との同等性が担保されない場合」

 違反の可能性のある例として指針案は、①研究レビューで評価した成分と届出食品中の機能性関与成分の同等性(含有量や製法など)が合理的に説明されない場合、②研究レビューで有効性が確認された量よりも届出食品中の機能性関与成分の含有量が少ない場合、③有効性が確認された摂取時の剤型と届出食品のそれが異なる場合において有効量の同等性が合理的に説明されない場合の3点を挙げていますが、②については「含有量が少ない場合」に加え「含有量が多い場合」も記載すべきです。また、これらに該当する商品が判明した場合、事業者は速やかに公表することを追記すべきです。

■P4 第2 広告その他の表示上の考え方

1 基本的な考え方

 この文章の中に、「容器包装以外の広告その他の表示にあっては、届出番号と届出された機能性表示を消費者が認識できるよう大きく目立つように表示すること」を明記することが必要です。消費者が選択するにあたって届出機能表示を知り、認識することが重要です。それと同様に、「国の審査や許可を受けたものではない」旨の表示も目立つように記載すべきです。(強調表示との比較のため)

■P5 (3)実験結果及びグラフ

 機能性表示食品の広告その他の表示において、引用するグラフ等は、消費者の誤認を招かないように、当該届出の最終製品を用いた試験のデータのみとするべきです。

■P6 (5)体験談

 体験談を表示するに際しては「景品表示法上問題となるおそれがある」としつつも、記載するなら調査対象人数や効果のあった割合の表示など3点を例示し、これらを「明瞭に表示することが推奨される」としています。このフレーズの「推奨」の文言をカットし、「明瞭に表示すること」とすべきです。機能性表示食品の体験談は本来禁止されるべきですが、条件付きで記載が許されるなら、その条件の記載を「推奨」ではなく、「義務対象」とすべきです。

■P7 3 打ち消し表示

 食品に記載される体験談は本来は禁止されるのが適当ですが、体験談に付随して用いられる打ち消し表示においても効果のない打消表示は事業者の免罪符として利用されているのが実態です。従って機能性表示食品についての「体験談」に付随する「個人の感想です」などの打ち消し表示は、打ち消し効果が認められないものなので「禁止」することを明記すべきです。

以上

7/19 食品添加物検討内容に関する意見書を提出

2019年7月19日付けで消費者問題担当大臣、消費者庁長官宛てに意見書を提出しました。

7月19日提出食品添加物意見書 

食品添加物表示制度についての意見

 現在消費者庁において、食品添加物の表示検討が始まっています。消費者が自主的・合理的な商品選択をするための唯一の手段であり、拡充こそすべきで、縮小するようなことがあってはなりません。

 私たちは、この点につき、以下のとおり意見を述べます。

  1. 一括表示の原材料項目の中に書かれた添加物を/や改行により区分することは一歩前進であるが、/の後に「添加物:」と記載すれば、さらに分かりやすくなる。
  2. しかし一括名表示や、増粘多糖類のように、物質名が記載されない表示では、内容が分からない。したがって商品を選択する上で情報量として不十分である。食品表示基準の「物質名を重量順に表示」という原則を守るべきである。次長通知(平成22年10月20日消食表第377号)にも、運用上の留意事項として、既存添加物名簿に掲げる物質名、天然香料の物質名は起源物質名、一般飲食物添加物は品名などと定め、科学的に適切な名称をもって表示するなどと記載されている。これらの原則にのっとり、「物質名に代わる一括名・簡略名・類別名表示」はただちに廃止すべきである。
  3. 文字の大きさは大きくして、情報を少なくするのには反対する。
  4. そもそも既存添加物は、1995年の食衛法改正時に流通していた天然添加物を、附則の経過措置としてリストアップしただけのものである。国会の付帯決議により、安全性評価がなされることになっているが、アメリカでGRASに掲載されているだけで、国際的に安全性評価が済んでいるとされているものもある。厚労省通知で新たに指定要請をする際に必要とされる各種毒性試験につき、全部実施された既存添加物はない。28日間反復投与試験と遺伝毒性試験しか行われていないものもある。
  5. 添加物の中には、コチニールのようなアレルギー物質もある。海外では、子どもの神経発達への影響などの警告表示をしている例もあり、使用されているすべての添加物の安全性が確認されているわけではない。添加物の警告表示についても再検討すべきである。
  6. 表示以外の方法としてのWebの利用は反対である。Webに多くの消費者がアクセスできる環境は整っていない。二次元バーコードも同様である。
  7. 無添加表示は食品添加物をすべて使用していないかのような誤認を招くため、認めるべきではない。

以上

【参加団体】食の安全・監視市民委員会/主婦連合会/新日本婦人の会/生活クラブ連合会/グリーンコープ共同体/NPO法人日本消費者連盟/遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン/我孫子市消費者の会/千葉県消費者団体連絡協議会/東京都地域消費者団体連絡会/たねと食とひと@フォーラム

12/17 消費者委員会食品表示部会の審議に対する要望を提出しました。

現在、消費者委員会食品表示部会で、食品表示の全体的在り方の検討が行われています。しかしこの審議は、多くの問題点があることから、食品表示を考える市民ネットワークでは審議のあり方・論点を消費者目線に沿って見直し、適正に審議をしていくことを求めて、消費者及び食品安全担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長、食品表示部会長、食品表示部会委員宛てに、「消費者委員会食品表示部会の審議に対する要望」(12月17日付)提出しました。


消費者委員会食品表示部会への要望書

消費者委員会食品表示部会の審議に対する要望

 食品表示を考える市民ネットワーク代表 神山 美智子

現在消費者委員会食品表示部会で、食品表示の全体的在り方の検討が行われています。しかしこの審議は、多くの問題点があることから、食品表示を考える市民ネットワークでは審議のあり方・論点を消費者目線に沿って見直し、適正に審議をしていくことを求めます。

1.食品表示部会において、11月8日に検討の前提として配布された「食品表示の全体像にかかる課題から解決策までの整理」と題する資料では、<原因>「情報過多(表示事項が多すぎる上、消費者に提示される情報が多すぎる)」と記載されています。しかも、前回11月27日の部会では、「一括表示」に残すものと、外しても良いものの仕分けまで議題に上っていました。

食品表示の基本はパッケージへの記載です。表示が多すぎるという認識は消費者への情報提供を少なくするとの結果を招くことにつながります。しかも、現在のパッケージの表示方法は、商品名や宣伝用の強調表示が表面と裏面に大きく記載されており、消費者が知りたい表示のスペースが少ないのが実態です。宣伝用表示面を1面のみにできないかなどの検討を求めます。

2.食品表示の問題は、「情報過多」にあるのではないと考えます。むしろ、食品表示が真実を覆い隠す働きをしている点にこそ問題があります。

例えば、食品添加物は原則全部の物質名を表示することになっているのに、「一括名」「簡略名」などを認めることにより多くの添加物の物質名が表示免除とされているのが実状です。中でも多くの増粘剤を使用した場合に認められる「増粘多糖類」は、事業者側の造語であると言われるものであり、使用の実態が見えません。

このような問題点を踏まえ、食品添加物の表示方法を原則に立ち返り、全部の物質名記載を可能とするにはどうすべきか、という論点から検討することを求めます。

3.このように現在でもわかりにくい食品表示となっている実態を何ら問題にせず、分かりやすく正確な表示の実現へと見直しを図ることへの認識を共有することなく、現行表示をいっそう簡略化することへの方策として、7年後、10年後を目途に、二次元バーコードを利用し、WEBでの情報提供をもって表示に代えることまで検討しているのは、消費者の選択の権利を無視し、中小企業者の実情をも無視するものです。実際、消費者の中には、個人の携帯端末でインターネットに接続したくない人も多くいます。

全商品にバーコードを印刷し、各店舗に複数のバーコード読み取り機を設置することは、中小企業が多い日本の食品事業者には不可能を強いるものです。表示方法のあり方としては現実的でないばかりか、今後の超高齢社会への対応としても消費者目線から外れています。むしろ、文字色の使い方、文字の大きさ等の検討が必要だと考えます。

4.食品表示法は、第3条基本理念において、「消費者基本法第2条第1項に定める消費者政策の一環として」「消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、並びに消費者に対し必要な情報が提供されることが消費者の権利であることを尊重する」「消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援する」と定められ、第2項には、小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響及び食品関連事業者間の公正な競争の確保に配慮する」と定められています。これらを踏まえた議論こそ必要です。

この点からも、食品表示部会での審議内容、審議方針には、消費者の権利を確保すること、及び小規模食品事業者に配慮することなど、法に規定された視点が欠けていると思わざるを得ません。法に沿った審議を求めます。

 

消費者委員会食品表示部会は、現行の食品表示体系が不十分なままであるという実態を認識した上で、それら課題を放置することなく、消費者目線からの審議を実施していくことを強く求めます。

以上

 【参加団体】食の安全・監視市民委員会/主婦連合会/新日本婦人の会/生活クラブ連合会/グリーンコープ共同体/NPO法人日本消費者連盟/遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン/我孫子市消費者の会/千葉県消費者団体連絡協議会/東京都地域消費者団体連絡会/たねと食とひと@フォーラム

 

3/12 遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書の再検討を求める意見書を提出

3月12日付で消費者及び食品安全問題担当大臣及び消費者委員会委員長宛てに、消費者委員会において遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書の再検討を行い、消費者庁に対してパブリックコメントの実施を勧告することを求める意見書を提出しました。

遺伝子組み換え表示制度報告書の再検討要望書

消費者庁は今年度、食品表示法に基づく、遺伝子組換え表示制度に関する検討会を設置し、3月14日の検討会をもって、報告書をとりまとめる予定となっております。

しかしながら、その内容は、多くの消費者・消費者団体の強い意向であった、表示制度の拡大は盛り込まれておりません。それのみか、「遺伝子組換えでない」旨の表示要件を厳しくすることだけが、結論とされております。

この要件は、消費者庁次長通知の改正ですむ問題であり、食品表示法に基づく表示基準(内閣府令)の改正を必要としません。

そのため、消費者委員会の意見聴取も不要であり、パブリックコメントも不要とされています。

私たちは、3月14日にまとめられる予定の報告書について、消費者委員会で消費者の食品選択の利益に関する重大問題として関心をもっていただき、十分な時間をかけて検討していただきたく要望します。

またパブリックコメントも行うよう、消費者庁に勧告していただきたいと思います。

以上

10/11 遺伝子組換え表示制度に関する検討会で表示義務対象範囲について再討議を要請しました

10/11付で消費者庁長官、遺伝子組換え表示制度に関する検討会座長ならびに委員へ、9月27日に開催された第5回検討会における拙速なまとめ方に対して、再討議を要請する意見書を提出しました。
遺伝子組換え表示範囲に関する再討議要請文

2017年9月27日に開催された第5回遺伝子組み換え表示制度に関する検討会において、表示義務対象の範囲の議論にあたり、消費者団体のヒヤリングで出された「消費者が誤解することのないよう、全ての加工食品を表示義務対象品目にすべき」との意見に対し、討議に必要な資料の提示がなく、また、討議が十分にし尽くされないまま、座長自ら発言された「少々強引なまとめ方」となったことは、消費者として納得のいくものではありません。科学的検証のみを根拠とする義務対象範囲に異議を唱えるとともに、表示義務対象範囲について、再討議することを要請いたします。

検討会の意見交換では「現行制度のままでよいとしたならば、検討会を開催した意味が無い。IPハンドリング証明書と海外生産者との契約により穀物輸入はできている。科学的検証以外にどのようにすれば表示ができるのかを考えてはどうか」、「社会的検証と科学的検証、IPハンドリング、トレーサビリティについても、資料を出して検討してはどうか」などの意見が出されました。

また、今年9月1日、社会的検証を根拠に全ての加工食品を対象とする原料原産地表示が義務化されたことを鑑みれば、遺伝子組換え表示についても、社会的検証または科学的検証と厳格な監視指導体制を組み合わせることで実現は可能であると考えます。全ての加工食品の原料原産地表示の義務化を参考にし、どのようにすれば全ての加工食品を対象にした遺伝子組み換え表示ができるかを議論すべきと考えます。

食の安全・安心に対する消費者の関心の高まりを受け、消費者基本計画では「消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援」を基本として、遺伝子組み換え食品表示を含め、食品表示に関する充実と信頼の確保が明記されています。このような主旨を確認し実現するためにも、表示義務対象範囲のまとめを撤回し再討議することを消費者として要請いたします。

以上

9/14 遺伝子組み換え食品表示の検討にむけて意見書を提出しました

2017年9月14日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長と遺伝子組換え表示制度に関する検討会委員10名宛てに、意見書「遺伝子組換え表示はすべての食品を対象に~「遺伝子組換え使用」を原則とした義務表示制度の導入を~」を提出しました。

4月から消費者庁主催で遺伝子組み換え食品(GM)表示制度に関する検討会が開催されています。第1回検討会では世界のGM農産物の栽培状況、GM表示対象農産物の輸入量・用途別仕向量、GM食品表示制度(日本・諸外国)、GM表示対象品目外食品の組み換えDNA等の検出について再検証、分別流通管理等の実態調査等、GM食品表示をめぐる情勢について、消費者庁より報告がありました。第2回~第4回では消費者団体、生協、消費生活コンサルタント、流通業、植物油脂メーカー・協会、コーンフレークメーカー、商社、豆腐メーカー、スナック菓子、スーパーマーケットよりヒヤリングが行われました。9/27開催予定の第5回以降の検討会で論点整理および義務表示の対象範囲の考え方等について議論が始まります。

遺伝子組換え食品表示意見書

遺伝子組換え表示はすべての食品を対象に~「遺伝子組換え使用」を原則とした義務表示制度の導入を~

消費者庁は懸案の遺伝子組換え表示制度の見直しへ向け、今年度末までの予定で、4月から有識者による「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」をスタートさせました。すでに4回の検討会が開催され、消費者及び事業者などからのヒアリングを行いました。9月27日開催の第5回検討会以降に論点の整理、遺伝子組換え表示の義務対象品目について議論される予定です。

現行表示制度は、15年間の運用過程で、消費者基本法に基づく消費者施策である「消費者の権利」(安全の確保、選択の機会の確保、必要な情報が提供されるなど)の確立にはほど遠いものであり、消費者にとってはほとんど役に立たない表示制度であるとして、その欠陥性が指摘されています。超輸入大国・日本の現状から考えて、制度の見直しにあたっては、どの国よりも消費者目線に立った表示制度として実現させることが喫緊の課題です。

その際は、当面の見直し課題を重視しつつも、環境影響など遺伝子組換え食品のもう一つの側面である重大な課題も視野に入れ、幅広い視点に立ってアプローチすることも求められます。また、ゲノム編集技術による新規開発も進められており、これら新育種技術による新規食品についても、遺伝子組換え表示制度として対応することが必要です。

そのような観点から私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、以下のように意見を表明します。

1.すべての食品を義務表示の対象にし、遺伝子組換え原料が使われていることを表示の原則とした制度へと改善すべきです。

・ 現行制度は、義務表示対象作物を使用しながら、加工後に組換えDNAなどが検出できない食品(しょうゆや植物油等)を表示の対象外に置いているが、それを見直し、表示対象に含めること。

・ ゲノム編集技術等の新技術による遺伝子改変作物・食品も、表示対象に含めること。

・ 現行の義務表示である「遺伝子組換え」表示が実質的に存在しない中にあっては、義務表示要件の見直しが必要である。科学的検出の可否を根拠とする現行8作物33加工食品群の表示要件を撤廃し、EU(欧州連合)等で導入されているトレーサビリティ制度の導入を担保に、原則すべての食品を対象にする制度へと改善すること。

・ すべての食品を義務表示の対象として、不透明な「遺伝子組換え不分別」という表示を廃止し、不分別の場合は「含まれている」ことを示す表示にすること。

・ また、任意表示となっている「遺伝子組換えでない」の表示は、すべての食品を義務表示の対象とした上で、廃止すること。

・ 油に関しては、まず、個別の原材料名をきちんと明記することが重要である。

2.意図せざる混入率の引き下げを検討すべきです。

意図せざる混入率5%未満は諸外国に比べ緩い基準です。第1回検討会で報告された「分別生産流通等の実態調査」結果をもふまえ、可能な限り混入率の設定を低くすべきです。

3.6月21日に発表された今年度の「消費者基本計画工程表改訂版」には、「食品添加物表示については、現状を把握した上で、必要な検討を行う」と記載されています。そうであるなら、遺伝子組換え添加物の表示のあり方、その方向性も視野に入れた検討を加えるべきです。

4.遺伝子組換え食品の環境影響については、今回の食品表示の直接の検討課題に含まれていませんが、開発・製造課程での環境影響や、輸入・陸揚げ・輸送時の「こぼれ落ち」などによる自生の問題も指摘されています。遺伝子組換え表示制度は、有機食品普及など「エシカル消費」の推進にも関わることであり、これらの点についても検討の背景に位置づけておくことが必要です。

5.論点の整理及び遺伝子組換え表示の義務対象品目の考え方等を議論する過程において、多くの人々が議論の内容を理解し意見を出せるような工夫と機会を設けることを要望します。

食品表示一元化検討会では消費者及び事業者から広く意見を聞く場として、意見交換会等が行われました。また米国では2016年7月に「全米遺伝子組換え食品表示法」が可決され、今年6月には米国農務省の農業市場流通局(AMS)は表示ルール検討の一環として、30の具体的な質問とその背景を公表し、約2か月間にわたり国内のみならず世界に向けてパブリックコメントを求めました。

我が国においても特に消費者の関心が高い遺伝子組換え食品表示については、米国農務省にならい、議論の過程において消費者が議論の内容を理解し意見を出せるような工夫と機会を設けることを要望します。

以上

参考資料

アメリカ農務省バイオ操作食品開示規則案30の質問

アメリカ農務省30の質問原文

 

 

6/16 規制改革推進会議の答申に抗議する意見書を提出しました

 2017年6月16日 内閣総理大臣、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長、規制改革推進会議議長宛てに意見書「さらなる規制緩和を進める規制改革推進会議「第一次答申」に対する抗議 ~消費者不在の「機能性表示食品制度」の廃止を求めます~」を提出しました。

規制改革推進会議答申に抗議

安倍首相の諮問機関「規制改革推進会議」は5月23日、「第一次答申」を安倍首相に提出しました。今後政府はそれをもとに「規制改革実施計画」を策定し、閣議決定後の施策実施導入を予定しています。

安倍首相が提唱する規制改革は、その対象が消費生活に身近な分野になるほどに、事業者優先・消費者軽視の色彩が強くなり、まったく消費者不在の施策も目立ちます。今回の「規制改革推進会議」の第一次答申においても、「魅力的なビジネスを世界に先駆けて実現させる」、そのために「岩盤規制改革に徹底的に取り組む」「一気にアクセルを踏み込む」との安倍首相の意向に基づき検討したことを表明しており、「ビジネス優先」を謳い「社会的規制」と「経済的規制」を混同した不十分で、乱暴な提案を提起しています。

その一つに「機能性表示食品制度」のさらなる規制の緩和が盛り込まれています。機能性表示食品制度は「消費者不在」の制度としてスタートし、事業者の責任による表示制度でありながら、その責任が担保されず、資料公開を原則とする届出制度も制度運用の核となる「届出ガイドライン」も、何ら実効性のない欠陥に満ちたものです。私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、これまで何度となく、導入反対・制度廃止を求めてきました。

実際、トクホ(特定保健用食品)の許可表示以上の機能性をうたうものも目立ち、消費者の混乱は最高潮に達しています。このままでは、誤認表示横行による財産被害だけでなく、大量健康被害も発生する可能性が高まっています。

そのような状況に対して規制改革推進会議の「第一次答申」は、消費者庁が行った『機能性表示食品に係る機能性関与成分の取り扱い等に関する検証事業報告』において明らかになった、導入2年後の機能性表示制度の欠陥や課題について少しも振り返ることなく、ただただ、事業者に活用しやすい制度へと規制を緩和し、事業者の要求に応えることのみを主張した内容となっています。

私たちは、このような視点は消費者の権利を一向に尊重していないものと考え、厳重に抗議するとともに、以下のような問題点から機能性表示食品制度の廃止を求め、トクホを含む保健機能食品制度の総合的・抜本的見直しに早急に着手することを要求します。

【記】

1.規制改革推進会議の「第一次答申」に盛り込まれた「機能性表示食品の改善」の項目は、事業者目線からのみ提案され、事業者の要求のみを取り上げたものであり、この提案に沿った施策が導入されると、いっそう食生活の混乱を招くことから、そのような提案自体に厳重に抗議します。

2.「第一次答申」は、機能性表示食品の届出事業者の負担を軽減することを目的に、「届出ガイドライン」の見直し・緩和を提起していますが、その方向性は現在の同ガイドラインの「欠陥性」をいっそう拡大させるものであり、強く反対します。

3.「第一次答申」は、「業界団体等による点検を経た届出書類について、消費者庁での確認作業が迅速に進む仕組みを構築する」ことを提案していますが、これは現行の消費者庁による届出書類のチェックを民間の「業界団体等」によるチェックへと大幅に変更・緩和する措置であり、「届出制度」に対する信頼性をますます低下させるものであり、強く反対します。むしろ書類提出日を遡って届出日とする現在の取り扱いを止め、消費者庁の確認作業が終了し、事業者の書類がそろった日を「届出日」とするべきです。

4.「第一次答申」は、生鮮食品の機能性表示食品制度の活用促進へ向け施策検討を求めていますが、季節食品であり、成分のバラつきを特徴とする生鮮食品は、本来、機能性表示食品制度には馴染まないものです。生鮮食品の制度活用への提案には強く反対します。

5.「第一次答申」は、18歳・19歳の消費者の対象データの活用を明確化することや、軽症者データの取扱い範囲の拡大をはじめ、アレルギー、尿酸値、認知症等に関するデータについても機能性表示食品の届出資料としての活用を可能とするよう検討を求めています。しかし、機能性表示食品はあくまでも健康な人を対象とした「食品」であり、機能表示については、消費者の混乱防止と健康被害防止の観点から、より慎重であるべきであり、この提案についても強く反対します。

6.機能性表示食品制度については、廃止こそ最善策です。この視点からの施策を実施するなど、現行のトクホなど保健機能食品制度の総合的・抜本的検討に早急に着手することを求めます。

以上

全ての加工食品の原料原産地表示の義務化を求めパブリックコメントを提出しました

2017年4月25日 食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関するパブリックコメントを提出しました

今回の改正で、国内で製造した全ての加工食品が義務付けの対象となる事に賛成します。対象外となった外食、インストア加工食品等についても、今後義務付けの対象とすることを求めます。

例外規定として、「可能性表示」、「大括り表示」、「可能性表示+大括り表示」、「製造地表示」が提案されていますが、これらを認める場合は計画書および実績書の保管の義務付け、偽装等違反した場合の厳しい罰則規定を求めます。また、この表示制度の運用を担保するため、トレーサビリティ制度の制定、監視・執行体制の強化、それに係る予算措置等を整えることを求めます。

【意見】

改正点①

●義務表示の対象について 基準第3条第2項

意見:消費者の選択の権利を尊重することを目的とし、国内で製造される全ての加工食品を義務表示の対象としたことに賛成します。但し、対象外となった外食、インストア加工食品等については、次の改正時には義務対象とする方向性で、表示を推奨すべきです。

理由:これまで表示拡大を阻んでいた選定2要件「品質の差異と50%ルール」が実質的に撤廃され、今回の改正においても対象外とされた外食、インストア加工食品等はあるものの表示対象食品は拡大され、消費者の権利が尊重されたものになると考えます。

●対象原材料について 基準第3条第2項

意見:重量割合1位については不十分であり、3位までの表示を推奨すべきです。また、液体だしの「調味料(アミノ酸)」ように、食品添加物であっても重量割合が1位の場合はその原産地を表示すべきです。

理由:韓国では上位3位までを義務表示の対象としており、実現は可能であると考えます。

●特定の原材料名を商品名に使用する冠表示について

意見:商品の冠となる原材料を使用している場合は重量割合に関係なく、その原材料と原産地を表示すべきです。

理由:「エビピラフ」「苺ケーキ」など、それを強調して販売するために原材料名を商品名に付けた場合、商品の選択に大きく影響を与えると考えます。

改正点②、③、④、⑤

●「可能性表示」、「大括り表示」、「可能性表示+大括り表示」について 基準第3条第2項表1

意見:基本的に反対です。但し、認める場合においては、事業者に対して計画書及び実績書の保管を義務付け、偽装等の違反を行った場合は罰則規定を設ける等、厳しい基準を定めるべきと考えます。

理由:消費者にとって、役に立つ表示の方法であるとは考えられません。これらの例外規定により、原則である国内で加工される全ての加工食品の原料の原産地表示の実行に消極的になり、逃げ道となる可能性があります。消費者の権利のためのものではなく、事業者にとって都合のよい骨抜き制度となることが懸念されます。

改正点⑥

●「製造地表示」について 基準第3条第2項表1

意見:中間加工原材料の製造地表示を義務付けることに賛成します。但し、製造地のみではなく生鮮原材料の原産地も併せて表示するべきです。少なくとも、国内製造の場合は原材料原産地を表示するべきです。

理由:食品、食品添加物、食器具などの輸入に際して必要な書類として、食品衛生法による「食品等輸入届書」があり、輸入申告に先立って検疫所へ提出しなければならず、届出書には食品の品名、数量、重量、輸入者名、生産国、製造者名、輸出者名、積込港をコードで記入することになっているため、トレースすることは可能です。

改正点⑦

●誤認防止策について 基準第3条第2項表1

意見:誤認防止策について、賛成します。

改正点⑧

●おにぎりののりについて 基準第3条第2項表6

意見:対象をおにぎりののりだけではなく、お弁当やのり巻き等に使われるのりも対象とすべきです。

理由:消費者は「おにぎりののり」の原産地のみを知りたいわけではなく、お弁当やのり巻き、ちらし寿司等に使われている「のり」の原産地を知り選択したいと考えます。

改正点⑨、⑩

●業務用加工食品、業務用生鮮食品について 基準第10条第1項、基準第24条第3項

意見:トレーサビリティ制度や罰則規定、監視体制等の整備・強化、予算措置を講じる事を求めます。また、食品衛生法の記録作成保管の努力義務を法的義務とすべきです。

理由:改正案が確実に実行されるためには、この表示制度の運用と情報の正確性を担保するための制度や規定、実施体制、予算等の整備、強化が必要であると考えます。

以上

遺伝子組み換え食品表示検討会の委員選出について意見書を提出しました

2017年1月27日付、消費者担当大臣および消費者庁長官宛てに、今後開催が予定されている遺伝子組み換え食品表示検討会の委員選出について意見書「食品表示の検討に消費者意見を反映する消費者委員を 遺伝子組み換え食品表示の見直しには消費者目線が重要」を提出しました。
遺伝子組み換え食品表示検討会の委員選出について意見書

積み残された課題が目白押しとなっている食品表示分野において、消費者庁は今年4月以降に遺伝子組み換え食品の表示に関する検討に着手することを明らかにしています。

消費者が自主的に選択できる食品表示体系の整備は、消費者の知らされる権利や選択する権利など消費者の権利の尊重・実現へ向けて極めて重要な要件であり、この検討には、真に消費者の権利を重視し、その実現を求める消費者委員の委嘱が必要不可欠です。

消費者庁及び消費者委員会は、「消費者の権利の尊重と自立支援」を前提とする「消費者行政の推進」を目指すことが設置法で定められていますが、これまでの食品表示の検討においては、製造所固有記号やトランス脂肪酸への対応、機能性表示食品制度の導入、さらには加工食品の原料原産地表示の迷走などに示されたように、「消費者の権利の尊重」ではなく、消費者と事業者の「利益の調整」に多くの時間が割かれ、結果的に、消費者の権利よりも事業者の利益の優先に軸足が置かれた検討姿勢が目立ちました。

その過程では、消費者の意見とは相入れない意見が消費者庁によって消費者側委員とみなされた委員から表明される例が散見し、消費者の権利の尊重の視点からの施策立案・実施に重大な支障をきたす例も発生しました。

当ネットワークでは、このような消費者の意見を代弁する機会を奪う食品表示関連の検討会の実態について深く憂慮するとともに、今後始まる遺伝子組み換え食品の表示検討においてはそのようなことがないよう、次の2点を要望します。

1.遺伝子組み換え食品表示の検討では、現状の表示実態が消費者の知らされる権利、選択する権利など消費者の権利を侵害していることを認識し、検出技術の格段の向上はもちろんのこと、トレーサビリティにより全ての遺伝子組み換え食品のみならず、飼料、添加物に対しても表示対象を拡大し、EU(欧州連合)と同等以上の表示制度とすること

2.その検討にあたっては、食品表示問題に取り組み、消費者の権利を尊重した消費者活動を展開し、事業者との利益相反のない消費者側委員を最低でも委員の全体数の3割以上になるように委嘱すること。その委員の委嘱にあたっては事前に消費者団体から意見を聴くこと

以上