11月25日 機能性表示食品制度の廃止を求める要望書を提出しました。

2015年11月25日、消費者及び食品安全担当大臣、消費者庁長官宛てに要望書「『わかりにくい制度』(機能性表示食品制度)の廃止を求めます」を提出しました。

機能性表示食品の廃止を求める要望書

河野太郎消費者及び食品安全担当大臣は、機能性表示食品制度について、「わかりにくい制度」と指摘され、「街角インタビューをしてもトクホ(特定保健用食品)と機能性表示食品制度について多くの人がその違いがわからないと答えるだろう」と述べられたことが報道されています。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」では、機能性表示食品制度が消費者に誤認を与えるだけでなく、消費者の健康被害・契約被害を増加させ、消費者に不利益を被らせる制度であると指摘し、トクホ制度、栄養機能食品制度との総合的・一体的見直しを実施するよう、現行機能性表示食品制度の運用中止・制度廃止を求めてきました。

同制度が導入されて7ヶ月経ちましたが、この間、多くの課題が提起され、それら課題が何一つ解決されないままに、ますます「わかりにくい制度」として推進されようとしています。それに加え、「いわゆる健康食品」にあっては機能性を暗示する表示やあいまい表示が依然として横行しており、機能性表示食品制度導入を契機として便乗表示も目立つようになりました。

私たちは以下の理由から、早急に現行制度の運用中止を実施し、トクホ、栄養機能食品などとの総合的・抜本的改善に着手することを求めます。

  1. トクホの審査で「安全性は評価できない」とされた成分が、機能性表示食品では健康に良いとされて販売される例がありますが、これは制度をわかりにくくさせている大きな矛盾です。安全性についてダブルスタンダードを許容するような制度は欠陥制度です。
  2. 販売60日前の届出制度とはいえ、データの公開期間が短縮されてきている現実は、届出に伴う公開制度の意義をないがしろにするものであり、消費者の「知らされる権利」を侵害するものです。
  3. これまでも消費者からは安全性・機能性に関する疑義情報が消費者庁に数多く提起されてきましたが、これに対し同庁は届出を受理したことに対する説明責任を果たしていません。疑義情報の提起や申出制度に関する制度的保障が担保されていない現状は、消費者の「知らされる権利」「選択する権利」を侵害するものです。
  4. 機能性表示食品制度の運用基準となる「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」は、厳密な科学的・客観的根拠の提出よりも、事業者の届出をより簡便にできるよう様々な方法を提示することを前提・重視した内容であり、この点が不安な食品の横行に道を開いています。ガイドラインに沿って「形式的審査をして届出を受理する」とする消費者庁の姿勢では消費者被害を防止することはできません。
  5. 有害事象情報(事故情報)の報告と公開が事業者に義務付けられていない中では、健康被害の未然・拡大防止はできません。被害はますます潜在化していきます。
  6. 機能性表示食品制度は「いわゆる健康食品」による「あいまい表示・暗示表示」を抑制することはありません。むしろ、食品分野で機能性表示を可能とする3制度が併存することによる複雑さによって、「いわゆる健康食品」の分野での体験談表示など「あいまい・暗示表示」はいっそう横行するようになりました。

以上の理由から、「わかりにくい制度」のままに放置するのではなく、早急に運用を停止し、トクホ・栄養機能食品制度などとの総合的・抜本的検討に取り組み、その改善に着手するよう求めます。以上

2015年8月31日 意見書「食品表示法改正の要望」を提出

2015年8月31日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、意見書「食品表示法改正の要望」を提出しました。

 

食品表示法は、平成25年第183回国会に上程され、平成25年6月13日成立、同28日公布され、2年以内に施行とされたものです。しかしながら、その後、規制改革会議において、健康食品の機能性表示を求める検討が行われ、平成25年6月14日、機能性表示を認める閣議決定がなされました。

また、この表示制度は平成27年3月末までに実施するとされたので、消費者庁は、平成25年12月から検討会を開催して、食品表示法に基づく表示基準に盛り込むことを決定しました。そのため、2年以内施行とされていた食品表示法は、急遽4月1日施行とする閣議決定がなされ、食品表示法に基づく新たな食品表示基準が、3月20日に、内閣府令第10号として告示されました。

私たちは、健康食品の機能性表示解禁に反対し、食品表示法に基づく届出制にも反対してきました。現在必要なことは、特定保健用食品を含む健康食品の表示、広告の適正化であり、いわゆる健康食品の規制であると考えています。

しかし、現実には本年4月1日から実施されてしまいましたが、機能性表示制度が食品表示法の中に位置づけられていないため、非常に分かりにくく、使いにくい制度となっています。そこで、とりあえず、機能性表示問題に限り、以下のとおり、食品表示法の改正を求めます。

1 食品表示法第11条(適格消費者団体の差止請求権)

11条は下記のとおりの文言となっており、差し止め請求を行える表示違反が「販売の用に供する食品の名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量若しくは熱量又は原産地」に限られていて、機能性表示食品の表示基準違反が差し止め請求の範囲から外れている。これは、本法案が国会で審議されているときには、「機能性表示食品制度」が存在していなかったからである。したがって、差し止め請求の対象に、機能性表示食品も加えるように改正すべきである。

「消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第四項に規定する適格消費者団体は、食品関連事業者が、不特定かつ多数の者に対して、食品表示基準に違反し、販売の用に供する食品の名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量若しくは熱量又は原産地について著しく事実に相違する表示をする行為を現に行い、又は行うおそれがあるときは、当該食品関連事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該食品に関して著しく事実に相違する表示を行った旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。」

2 食品表示法第12条(内閣総理大臣に対する申出)

12条1項は下記のとおりであるが、消費者庁は、この条文の対象は現に販売の用に供されている食品に限るとしている。しかし、機能性表示食品は、販売前60日の届出と届出資料の公表が義務付けられており、何人もこれを見て販売前に科学的根拠等を検討することができる。届出の中には、科学的根拠に疑義のあるものが存在するので、販売前にも申出ができるとするべきである。そうでなくては、販売前60日の届出を義務づけた意味がない。

「何人も、販売の用に供する食品(酒類を除く。以下この項において同じ。)に関する表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認めるときは、内閣府令・農林水産省令で定める手続に従い、その旨を内閣総理大臣又は農林水産大臣(当該食品に関する表示が適正でないことが第六条第一項の内閣府令・農林水産省令で定める表示事項又は遵守事項のみに係るものである場合にあっては、内閣総理大臣)に申し出て適切な措置をとるべきことを求めることができる。」

3 食品表示法第6条の指示、措置命令、回収命令等が、機能性表示食品に適用できるかどうか、不明確であるから、機能性表示食品に対しても指示等ができる旨を明示すべきである。

以上

2015年8月31日 意見書「原料原産地・食品添加物・遺伝子組み換え表示等の検討を早急に開始することを求めます」を提出

2015年8月31日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、意見書「原料原産地・食品添加物・遺伝子組み換え表示等の検討を早急に開始することを求めます」を提出しました。

 原料原産地・食品添加物・遺伝子組み換え食品表示等の検討を早急に開始することを求めます 長年の消費者運動の懸案だった、複数の法律にわたる複雑さを解消し、食品の安全性の確保と消費者の選ぶ権利を求めた食品表示法の一元化が実現し、2013年6月28日公布され、今年4月1日に施行された。 同法法案は衆議院で11、参議員では12の付帯決議がなされている。製造所固有記号の在り方、栄養義務表示の見直し、加工食品の原料原産地表示の在り方、仲食、外食へのアレルギー表示の在り方、食品添加物の表示の在り方の見直し、などについて本法成立後速やかにその検討の為の機関を設置し、検討に着手することとある。 さらに法案可決後、当時の森まさ子消費者担当大臣は記者会見で「今後は消費者団体など関係者の意見をしっかり取り入れ、できるだけ早く取り組みを始めたい」と述べている。 しかし、法律成立後2年を経過した現在も、未だ検討の兆しはない。「速やかに」「できるだけ早く」とは単なる言葉遊びではないはずだ。 複数回に分けて、基準が変更されることは消費者のみならず、事業者にとっても大変紛らわしく、混乱をきたし望ましいことではない。しかも、新法に基づく表示に完全移行が事項によってばらつきがある。加工食品と添加物は平成32年4月1日、生鮮食品は平成28年10月1日、機能性表示食品は本年4月から施行するなど経過措置期間が異なり、全く理解に苦しむ。 積み残された食品表示基準の検討機関を設置し、すみやかに検討をスタートすること。さらに、各課題のスケジュールを具体的に示すことを強く求める。 以上

2015年6月4日 機能性表示制度の見直しを求める意見書を提出

2015年6月4日、消費者担当大臣および消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、機能性表示制度の見直しを求める意見書「能性表示制度は欠陥制度 早急に運用中止し、見直しを求めます ~「ガイドライン」に見る消費者にとっての機能性表示制度の欠陥性~」を提出しました。
機能性表示制度の見直しを求める意見書
「ガイドライン」の欠陥性 概略

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、「欠陥制度」であることから導入を見直すようにと政府に要求してきた食品の「機能性表示制度」が4月1日、拙速のまま導入されました。すでに、販売60日前の届出と届出情報の公開制度によって、5月29日現在、26製品が届出受理されたことが消費者庁ホームページで公開されています。しかし、すでに、そのいくつかについて、安全性及び機能性に関するデータへの疑義が提起されており、消費者の混乱は増す一方となっています。

この制度創設に際して参考とされたアメリカには、「ダイエタリーサプリメント健康教育法」(DSHEA=ドシエ)という規制法があり、錠剤・カプセル型のサプリメントについて事業者の法的義務が規定されています。

しかし、日本の機能性表示制度は、法の制定・改正をまったく伴わない規制緩和を前提に設計されたもので、その運用は、抜け穴だらけで法的拘束力もない「ガイドライン」(指針)に、基づいて行われることとなりました。

この機能性表示は事業者の責任で実施し、消費者庁は安全性・機能性の科学的根拠について評価・関与しないという制度です。その旨が包装表示にも義務付けられることになっています。消費者目線よりも、アベノミクスの「成長戦略」に基づく事業者の規制緩和を優先した無責任な制度としてスタートしたものです。

制度設計にあたって安倍晋三首相は、「世界で一番企業が活動しやすい国をめざす」とし、その具体例として機能性表示制度を挙げたことはあまりに有名です。

しかし、その結果として、次のような問題が浮上することになりました。

 

  1. 特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品制度の3つの制度が併存することになり、従来の「いわゆる健康食品」の販売とあわせ、表示の混乱が生じています。「機能性表示まがい食品」が以前から横行しているのに、その監視・チェック体制は整備されていません。
  2. 現行トクホ、栄養機能食品、医薬部外品の許可表示などと機能性表示との表示に関する混乱が生じています。
  3. 健康被害情報の事業者の報告義務・公表義務制度がないことから、ますます健康被害が潜在化していきます。
  4. GMP(適正製造規範)制度の義務化がないことから、品質への信頼性も担保されないままのスタートとなりました。
  5. チェック機能が発揮される保証がないことから、行政も業界も運用にあたって手探り状態がしばらく続きます。その間も消費者被害(健康被害・財産被害)は増加していきます。
  6. 機能性表示は「いわゆる健康食品」の表示の規制にはつながりません。それは、トクホ制度創設によっては誇大・誤認表示がなくならなかったことと同様です。むしろ、「いわゆる健康食品」の誇大・誤認・虚偽・あいまい・ほのめかし・体験談表示等、不当な表示を助長させる結果となっています。
  7. 制度への理解を求める「消費者教育」が強調され、理不尽な「消費者の責任論」が主張される温床ともなっています。制度創設によって、もっとも迷惑を被るのは消費者であることがますますはっきりしてきました。機能性表示制度は欠陥を持つ「欠陥制度」なのに、その欠陥制度を消費者に理解してもらおうと消費者教育の対象にすること自体が本末転倒です。
  8. しかも、新規に導入されたはずの「申出制度」が当初の消費者庁の説明とは異なっていることがわかり、申出制度の十分な機能が発揮できずに形骸化する可能性があることも判明しました。販売60日前の届出と、届出情報の公開にも時間差があることから、公開の意義が薄れ、「申出制度」を利用しようとする消費者に混乱を与えています。

 

そこで、消費者被害を防止し、社会的混乱を解消し、食品表示の適正化を図るために、私たちは以下の3点を緊急に要望します。

(1)機能性表示制度の運用停止および3つの制度の総合的・一元的な見直し検討に速やかに着手(2年後見直しを待たずに)すること 

(2)「いわゆる健康食品」への法的規制の強化・導入と、市販後調査の実施、およびその結果を公開する制度的導入(事後規制の強化)を図ること

(3)消費者被害防止への各種制度創設食品事故情報の報告義務化、リコール基本法の制定検討に着手するとともに、

食品表示法の申出制度を抜本的に見直し、調査結果の申出人への通知や、異議申し立て制度も保証した「スーパーコンプレインツ制度」へと速やかに改正を図ること

導入された機能性食品制度では、その実際の商品が販売される前から研究データをめぐる不適切・不適正な運用が散見しています。これは制度自体に問題があることを示し、制度運用を適切に実施することを目的としたガイドラインにも重大な欠陥があることを示しています。

私たちは、運用の核となるガイドラインの課題、その欠陥性を指摘することで、再度、同制度運用の即刻中止・見直しを求めます。

以上

2015年4月14日 トランス脂肪酸の表示義務化に向けて要望書を提出

2015年4月14日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、要望書「日本動脈硬化学会の指摘を踏まえトランス脂肪酸の表示を義務化すべきです」を提出しました。
トランス脂肪酸表示義務化要望書

消費者委員会「食品ワーキング・グループ」は3月20日、トランス脂肪酸に関する日本動脈硬化学会・寺本民生前理事長によるヒアリングを実施し、今後、報告書をとりまとめることを決めました。同学会は、消費者の健康被害防止の観点から、2013年にトランス脂肪酸を動脈硬化性疾患発症の原因物質の一つとして位置付け、その表示を「ただちに行うこと」とする要望書を安倍晋三総理大臣と当時の阿南久消費者庁長官に提出していました。当日のワーキング・グループで寺本前理事長は、改めて、トランス脂肪酸の表示義務化が喫緊の課題であることを表明されました。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、この指摘の重要性を踏まえ、消費者の安全の権利、消費者の選択の権利等、「消費者の権利」の確保・実現へ向け、トランス脂肪酸の表示を義務化することを強く求めます。

トランス脂肪酸の摂取は、動脈硬化や心臓病のリスクを高めることが明らかとなっており、アレルギー疾患や免疫力の低下とも関係しているとの指摘も多くあります。そのため多くの国で表示は義務化されており、使用制限や使用禁止へと向かっています。

しかしながら、日本においては一部の偏った食事をする人を除きリスクは低いとして、表示は義務化されておらず、そのため摂取を控えたくても表示で選別することは出来ない状況にあります。トランス脂肪酸の健康影響についての情報も少なく、摂取に気を配る人も多くありません。最も影響が心配とされる子どもや若い女性に過剰摂取が存在していることは大きな問題です。

消費者委員会食品ワーキング・グループのヒアリングでも寺本氏は、学術的見地からトランス脂肪酸の心血管病への影響は明白であり、米国で2006年にまとめられた報告書においても作用機序として立証されていると説明。動脈硬化が完成するには何10年もかかり、結果としてある日突然「心筋梗塞」という形で現れることから、ファーストフードの日本上陸が70年代であることを考えると疫学的な実証には時間を要するが、将来深刻な問題となると予測されています。若い世代、特に子どもたちへの影響が大きいことをもっと真剣に考えるべきだと述べられました。

そして、健康寿命延伸のための対策として、予防医学の重要性とそのことを補完する社会システムの重要性、世代間で知恵を継承していくことの重要性を強調され、トランス脂肪酸については限りなくゼロを目指すことが望ましく、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸と分けて表示することが望ましいと提言、現在は表示されていない以上、消費者には選択できないこと、事業者側の削減努力にもつながらないこと、などを指摘されました。

消費者委員会は、トランス脂肪酸の表示に関する検討はワーキング・グル―プとしては終了とし、とりまとめを行なう予定とのことですが、今回のヒアリングにおける再度の意見表明、そしてその要望には日本高血圧学会、日本循環器学会、日本小児科学会等、六つの学会も同意していることを重く受け止め、予定する報告書においては、トランス脂肪酸の表示義務化実現を明記した内容とすることを強く求めます。

以上

2015年3月6日 「ノンアルコール飲料の特定保健用食品許可に抗議するとともに、許可の取り消しを求めます」を提出

2015年3月6日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、「ノンアルコール飲料の特定保健用食品許可に抗議するとともに、許可の取り消しを求めます」を提出しました。
ノンアルコール飲料の特定保健用食品許可に抗議・取り消しを求める抗議書

 2015年2月18日消費者庁は、消費者委員会が2014年8月5日に特定保健用食品(トクホ)として表示許可することが「不適切である」と答申したノンアルコール飲料2品目について、許可したことを発表しました。

消費者委員会が「不適切」としていたのは、ノンアルコール飲料が、未成年者のアルコール摂取を促す可能性が払拭できないことなどが理由ですが、消費者庁は、許可にあたって、ノンアルコール飲料を酒類と同等に扱う業界自主基準の運用厳格化を条件にしたとしています。ただし、当日の記者会見で同庁担当官は、この判断にあたっては消費者委員会に事前説明をしていないことを認めています。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、業界自主基準を遵守することを条件にしてまで、消費者庁がトクホを許可すること自体が問題であり、それが遵守される保証はまったくないと考えています。

そもそもノンアルコール飲料は誰でも購入できる「清涼飲料水」であり、一行政機関が未成年者に販売しない等の条件を付けるのは矛盾しています。

しかも、今回のトクホ許可には、ノンアルコール飲料そのものの問題のほかに、消費者行政に対し監視機能を発揮すべき消費者委員会と、施策遂行を担う消費者庁との不適正な関係、トクホ制度の審査・許可への不信と、制度への監視体制の不透明さ、などの問題があることも明らかになりました。

以上の観点から、私たちは、ノンアルコール飲料のトクホ許可に抗議し、その撤回を求めるとともに、次のような意見を提起します。

【記】

1.消費者委員会は、自らの検討結果に基づき提示した「答申」が事前説明もないままに覆されたことを重視し、国民から付託された監視機能を適正に発揮するために、ノンアルコールのトクホ許可を撤回するよう消費者庁や内閣総理大臣に「建議」「勧告」すべきです。

2.アルコール飲料は致酔性(飲めば酔う)・依存性のある飲料で他の飲料とは全くことなることからトクホの対象には含まれていません。ノンアルコール飲料は、アルコール飲料と清涼飲料の壁を低くし、アルコール摂取へと促す危険性が大きく、未成年者飲酒を誘因する飲料であることを消費者庁は重視すべきです。

3.これまでの消費者団体の調査では、消費者は、ノンアルコール飲料をアルコール飲料の代替品と考えている人が多いことが明らかになっており、そのような飲料を国が推奨するトクホとして許可すべきではない。

4.そもそも消費者庁は、許可するにあたって条件を付け、その条件が遵守されなければ許可を取り消すとしていますが、その条件が遵守されることを保証する監視体制も明確でない中では、極めて無責任な判断と言わざるを得ません。経済優先の規制改革に重きを置く施策を根本から見直すべきです。

5.「エコナ問題」をきっかけにトクホの許可・更新・取り消しのあり方、その課題が明らかになったものの、その後の対策が一向に進んでいません。新たに機能性表示制度の導入も予定されていますが、消費者庁及び消費者委員会は、今回の問題も踏まえ、保健機能食品(トクホ、栄養機能食品)制度、機能性表示制度等について、関係省庁とともに、抜本的な総合的再検討に早急に着手すべきです。

以上

2015年2月27日 「健康産業新聞」の「主張」と私たちの公開質問状への「返信」内容に抗議します

当団体は2015年2月27日、UBMメディア株式会社様宛て、『「健康産業新聞」の「主張」と私たちの公開質問状への「返信」内容に抗議します』を送付しました。
 「健康産業新聞」の「主張」と私たちの公開質問状への「返信」内容に抗議

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、このほど、1月13日付け「健康産業新聞編集長」あて公開質問状に対して、貴社からの2月3日付け「弊社編集長あての公開質問なる文書について」(以下、返信)を受け取りました。

極めて残念なことに、その「返信」は、私たちの公開質問への回答を拒否し、その理由として「こうした質問状を消費者団体と思しき貴団体からいただく根拠も見あたらない」「当紙は知的所有権に属する有料媒体」であり、「購読者に限定的責任を持つもの」であって「断片的な質問に関して購読者以外の不特定多数に回答するものでもない」とし、食品業界のオピニオンリーダーのように振舞おうとされている報道機関としては、驚くほど閉鎖的で傲慢な態度を表明されています。

その上、貴社「返信」は、「健康産業新聞」の「主張」欄で批判したT委員(立石幸一委員)について、一方では「T個人に興味もなく」「また個人を批判するものでもなく」、だから「あえてT委員としている所以」と匿名理由の一端を説明しながら、他方では、「Tなる人物について食品表示部会で事業者の立場を標榜し、事業者の声と異なる主張を繰り返していることに疑義があり」「文書改ざんの指摘を受けるなどの経歴」があり、「国民が政策を託す委員として望ましくない」などと「主張」欄での個人批判を再び確認するなど、私たちが問題としている「主張」欄が立石幸一委員の名誉を損なう内容であったことを、今にいたっても、謙虚に見据えようともしない、矛盾に満ちた内容を含んでいます。

しかも、貴社の「返信」は、5年前に発足した消費者庁および消費者委員会においてなぜ食品表示の課題を検討することになったのか、その経緯や、その検討の社会的要請について注意をはらうこともなく、「事業者の立場」や「事業者利益」が「消費者の利益」「消費者の権利」とどう関連してくるのか、といった貴社の「主張」欄に対する私たちの疑問・質問には一切答えようとせず、ただ「購読者以外には答えない」と一方的に回答を拒否されています。まさに報道機関にあるまじき「返信」内容と言わざるを得ません。

私たちは、貴社発行の健康産業新聞の「主張」欄が立石幸一委員の名誉を損なうだけではなく、消費者委員会や消費者庁、及びそれら機関に設置された検討会等の役割に関する貴社の認識において「おかしい」と思われる点を記載内容に即して指摘し、貴社の判断の根拠とその対応について質問しました。

しかし、貴社はその肝心な点について「返信」において回答を避けることを表明し、あろうことか、私たちの公開質問状に対し、当ネットワークが本当に作成・提出したものなのか、公開質問状は立石幸一委員が記載したものではないのか、T委員と立石委員は同一人物なのか、同委員は、当ネットワークの役員ではないのか、同委員は消費者団体に所属しているのではないのか、など、全く的外れの憶測のもと、「返信」での記載のほとんどを、その真偽の確認を求めることに費やしています。

このような貴社の質問について私たちは、公開質問状の提出とその質問項目に対し、それを素直に受け止められない貴社が、真実から目をそらしたい一心での願望が現れたものと思っていますが、いずれにせよ、真面目な報道機関としての姿勢は微塵もなく、言語道断と言わざるを得ません。

貴社からの質問に対しては、私たちは次のように事実を回答するのみです。

1.1月13日付け公開質問状は、私たち食品表示市民ネットワーク(代表・神山美智子)で検討・作成・確認して貴社に提出したものである。

2.立石幸一委員は、生産者・事業者委員として消費者委員会食品表示部会の委員をしていることから、私たちが主催した「メディア懇談会」に審議の経緯の説明を求める講演をお願いした経緯があるが、当ネットワークの役職員でも役員でもない。この「メディア懇談会」の模様はいくつかのメディアでも報道されている。

3.貴社は、公開質問状は立石委員が執筆したものではないか、などと当ネットワークに問うているが、それは全くの悪意に満ちた邪推であり、それ自体が、立石幸一委員の名誉を傷つけるものである。

それにしても、貴社は「事業者の立場」であれば「その発言はこうあるべきである」とあらかじめ狭く断定され過ぎているように思えます。却って目の前のダイナミックな事実の推移が見えない、あるいは見ようともしないで自らを縛っていると考えざるを得ません。貴社の想定する「事業者の立場」を貴社自身が明確にしていないために、そのステレオタイプの情報分析手法は私たちの憶測でしかありませんが、それが貴社の取材・報道活動にどんな影響を及ぼしてくるのか、的外れな私たちへの質問と、問われているのは貴社であるのにそれを受け止めることのできない貴社の、真摯さが欠如した今回の対応姿勢を見るとき、その点が懸念されます。

消費者行政の推進が求められる中にあって、健康産業新聞の「主張」欄と今回の返信内容は、食品表示情勢についての貴社の認識の一端を表象したものと考えます。それ故に、私たちが公開質問状で示した事実への真摯な把握、問われたときに必要な、根拠についての納得できる説明は、「言論」を担う報道機関の重大な責務であるとともに、「業界紙」であれば、業界健全化への一里塚とも考えます。それを貴社が回避していることは、食品業界全体への消費者の信頼感を失うことにもつながりかねません。

私たちは、そのような責務・役割を放棄している貴社の「主張」欄と今回の返信内容に、厳重に抗議します。

2015年2月3日 健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄への公開質問に対する回答が届きました

当団体は2015年1月13日、UMBメディア株式会社「健康産業新聞」編集長様宛てに「健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄への公開質問を行ないました。その公開質問に対して、UMBメディア株式会社様より、2015年2月3日付文書『「弊社編集長あての公開質問」なる文書について』が届きましたので、公開いたします。なお、全文掲載の了承を得ております。
「弊社編集長あての公開質問」なる文書について UBMメディア株式会社

2015年1月13日 健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄への公開質問

2015年1月13日、UMBメディア株式会社「健康産業新聞」編集長様宛てに昨年11月5日号「主張」欄への公開質問を行ないました。

【本文】

昨年11月5日号「主張」欄への公開質問

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は今年1月になって、貴紙「健康産業新聞」が、2014年11月5日号「主張」欄で、「(消費者委員会の食品)表示部会は、文書捏造の疑惑の委員にいつまで施策決定の議論をさせるのか・・・」という題のコラムを掲載していることを関係者からの情報提供で知りました。内容は個人攻撃を主体とした傲慢な姿勢に満ちたもので、取材不足と深刻な表示問題への極めて浅い認識で書かれたものと考えます(概要を別掲)。

私たちは、これまで食品関連の「いわゆる業界紙」にあっても、ジャーナリズム活動にかわりはなく、真実追求と真実報道を目的とした「言論の自由」を担う責任機関であると位置付け、どのような報道機関であっても取材に応じてきました。事実に基づく真実追求こそが、業界の適正化につながり、社会的信頼を醸成する道筋であり、その責任を「いわゆる業界紙」も担っていると考えてきたからです。

ところが、貴紙の「健康産業新聞」の「主張」欄は、主張の前提となる事実について、当時者への取材もないままに、食品表示問題への浅い認識と表現力の欠如もあって、かえって真実から遠ざかり、何よりも貴紙が俎上(そじょう)にあげているT委員(立石幸一委員)の社会的信頼性を失墜させ、結果として、食品業界全体の信頼感を喪失させる内容となっています。

報道機関は、「正しい情報提供」と「言論活動」という両面の内実が常に問われる社会的責任を担っています。言論活動の弱さを「情報提供」で補うことはできません。今回の「主張」欄は、はからずも、貴紙のコラム欄に示された「言論」がいかに思慮浅いものか、業界専門紙でありながら、前提となる事実の分析力がいかに危ういものであるかを物語っています。それだけにT委員(立石幸一委員)の名誉を一方的に損なう結果となり、人権を無視する内容となっています。「主張」欄を読む限り、貴紙は、食品業界のオピニオンリーダーであるかのように自らを位置づけられていますが、このような「主張」内容では、ますます、健康食品業界の社会的信頼感は失われていきます。

私たち「食品表示問題を考える市民ネットワーク」は、貴紙の2014年11月5日号「主張」欄に対し、以下の点について公開質問します。なお、ご回答は1月31日までにお願いします。ご回答については、当「ネットワーク」ホームページにて公開することをあらかじめ申し添えます。

【質問事項】

1.「事業者(代表)を自称するT委員」とは立石幸一委員のことであることは公開審議の出発点から公のことですが、「主張」欄ではなぜ、「T委員」と匿名にしているのですか。公開での発言であり、氏名も公開され、しかもそれが容易に特定できるのに、敢えて匿名にした理由は何ですか。また、個人批判を中心とする主張でありながら執筆者名を記載していないのはなぜですか。

2.T委員の「不規則発言」という言葉が何カ所かに登場しますが、どの発言が「不規則」なのですか。また、それを「不規則」と判断された理由は何ですか。

3.「事業者の多くが存続を求める固有記号」との記載がありますが、そう主張される根拠は何ですか。

4.T委員のことを、「事業者の立場だとしながら(固有記号)廃止論の急先鋒に立ち、事業者の主張とは真逆の廃止論を振りかざししている」と記載されていますが、T委員の主張のどこがどのように問題なのですか。

5.「事業者の意向とは異なる政策が進みつつある現実」とはどのような「現実」のことを指しているのですか。

6.T委員を「引きずりおろせ、誰が推薦したんだ、との声もあがり」「消費者庁の政策決定への疑問も出始めた」との記載がありますが、「引きずりおろせ」との「声」は誰が誰に対して「あげた」ものですか。また、消費者委員会検討会の一委員に過ぎないT委員の発言が別機関である「消費者庁の政策決定への疑問も出始めた」という記載へとつながる根拠は何ですか。このような行政への「圧力」があったかのように示唆される記述の根拠を明らかにして下さい。

7.トランス脂肪酸に関する検討については、「文書捏造の疑惑」と記載しつつも、「この人物が提出した捏造文書」「文書捏造などの奇行が指弾されている人物」と断定的な記述も見られます。貴紙は、T委員の文書に関する食品安全委員会の対応に対し、消費者団体などが食品安全委員会に抗議書を提出したことをご存知ですか。その内容についてどう思われますか。T委員について「文書捏造などの奇行が指弾されている人物」と一方的・断定的に記載したことで、T委員の名誉を著しく損なう内容となっていますが、この点についてどう認識されていますか。

8.「主張」欄は、「問題の人物の即時の更迭」を求め、そうなっていない状況を「表示部会の品格を傷つける事態」と記載していますが、「部会の品格」とは具体的に何をさしていますか。

9.「そもそも、事業者がほとんど知らないこの人物」とT委員のことを記載していますが、この知らない「事業者」とはどのような事業者のことを指しているのですか。

10.「事業者側が固有記号廃止を受け入れなければならなくなると、もはや部会は無用の長物と言わざるを得ない」と記載されていますが、仮に部会が、製造所固有記号を原則廃止へと明確化することを結論づけたなら、なぜ、そのような結論を出す部会が「無用の長物」となるのですか。

11.そもそも、健康産業新聞の「主張」欄は、「事業者の利益」と「消費者の利益」、その関係をどうお考えなのですか。

私たち、「食品表示を考える市民ネットワーク」では、今回判明した健康産業新聞の「主張」欄は、部分的な事実のつまみ食いと、報道機関が避けるべきひとり相撲の思いこみ、及び、多面的な取材活動の回避や深い洞察過程からの意図的な逃避など、ペンを持つものが本来はしてはならない表層的な行為に基づいて作成されたものと思わざるを得ません。同欄で個人批判の対象にされたT委員への取材もせずに、「捏造」「奇行」「問題人物」「引きずりおろせ」「奇っ怪なのは更迭させないこと」など、一方的にその名誉を損なう記述で埋めていることは重大な問題と考えます。個人が特定される匿名などはそもそも匿名の名には値しません。それは執筆者や新聞社の責任回避という無責任さを示す行為です。上記質問事項について、1月31日までの回答を求めます。

以上

 

【参考】

健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄 同欄には次のように記載されています。

■事業者(代表)を自称するT委員が、消費者委員会の表示部会で不規則発言を繰り返している

■事業者の多くが存続を求める固有記号についても、事業者の立場だとしながら廃止論の急先鋒に立ち、事業者の主張とは真逆の廃止論を振りかざしている

■この人物がどのような経緯で委員となったのかも不可解

■4月のトランス脂肪酸の議論では遂に文書捏造の疑惑が飛び出してきた

■その時点で「更迭」は不可避とみられていたが、表示部会は何の処分も行わず議論を続行している

■問題の人物だが、例えば、会議時間の多くを意味不明の自己主張で占有したり「消費者庁を事業者庁に変えろ」などの不規則発言を繰り返し、固有記号問題でも事業者(代表)と称しながら、事業者の声とは真逆の廃止論を展開してきた

■このような不規則な表示部会で、事業者の意向とは異なる政策が進みつつある現実を事業者は知らない

■話が伝わるにつれ「引きずりおろせ」「誰が推薦したんだ」などの声も上がり、消費者庁の政策決定への疑問も出始めている

■トランス脂肪酸に関する表示部会で、この人物が提出した捏造文書が問題となった

■奇っ怪なのは、この時点で表示部会はこの人物を更迭せず、未だに固有記号などの政策議論に参加させていることだ

■食品表示問題は産業界にも重要で、消費者行政全般に関わる問題。部会の品格を傷つける事態を消費者委員会の出来事と看過してよいのだろうか

■事業者がほとんど知らないこの人物が、事業者の主張と相入れない議論を展開し、その結果、事業者側は固有記号廃止を受け入れなければならなくなると、もはや部会は無用の長物と言わざるを得ない

■ましてや文書捏造などの奇行が指弾されている人物を政策決定の委員として許容し、政策議論を進めるとなると、表示部会や消費者委員会のコンプライアンスは一体どうなるのか

■問題の人物の即時の更迭と併せて、このような問題委員が事業者代表として選出された経緯や、推薦者の推薦責任も明らかにし、同じ誤りを繰り返さない仕組み作りと迅速な議論の正常化を求めたい

2014年11月7日 食品表示基準案「答申書」へ反対の意思を表明するとともに消費者委員会に抗議する文書を提出

消費者委員会に厳重に抗議するとともに食品表示基準の「答申」内容に強く反対します。

2014年11月7日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、消費者員会の食品表示基準案に関する「答申書」への反対の意思を表明するとともに、消費者委員会に抗議する文書を提出しました。

食品表示基準「答申」への反対意見および消費者委員会への抗議文

消費者委員会は、同委員会「食品表示部会」が10月31日に食品表示基準案に関する「答申書案」を同委員会に提出したことを受け、同日、内閣総理大臣にその内容を踏まえた「答申書」を提出しました。この答申書は、消費者から批判の強い消費者庁提案の食品表示基準案をそのまま認めるものであり、事業者の利益のみを最大限重視した内容です。答申書案を検討した同委員会食品表示部会の検討経緯にも疑問がもたれています。同部会は、10月15日には消費者庁案に「反対し修正を求める」内容だった答申書案を、わずか2週間後の31日には、消費者庁案にことごとく「賛成する」内容へと180度転換させる結論を出しました。答申にいたる検討経過、及び内容については、不透明極まりない重大な疑義がもたれる前代未聞の答申となっています。

一つの例として、消費者委員会「食品表示部会」は、部会全体のコンセンサスを得るための丁寧な検討を放棄し、項目ごとに「多数決」を採用するなど、およそ「消費者の権利の尊重」に軸足を置くはずの食品表示に関する検討には馴染まない方式を採用しました。一般に、施策決定に多数決を導入するには、委員会構成の公平性について、及び一人ひとりの委員について、国民・消費者の納得と信頼・確認を前提としますが、その検証もなされないままに、安易な審議方式が採用されました。部会委員の選任方法をはじめ、部会での少数派の意見をどう尊重するかという民主主義の基本すら考慮しない、独善的な審議方法がとられたのです。この点も前代未聞です。

答申にはパブリックコメントで寄せられた多くの消費者の意見が反映されていません。むしろ、安全の権利、知らされる権利、選択する権利など、「消費者の権利」を侵害する内容ばかりとなっています。「権利」と「利益」の混同が見られます。

本来、消費者行政を消費者目線から監視する機能をもつ消費者委員会にあっては、事業者の利益のみを重視した消費者庁案に対しては、消費者の権利を守る立場からの「建議」の提起によって、その姿勢をただすのが国民・消費者の期待にかなう消費者委員会のあり方のはずです。

にもかかわらず消費者委員会は、その重大な役割を認識せず、消費者庁の施策提案に反対すらできず、消費者の期待に応え得る姿勢を貫くこともせず、消費者の望まない食品表示基準案に賛同するという極めて大きな過ちを犯しました。このような消費者委員会にあっては、今やその存在意義すら厳しく問われているものと思わざるを得ません。

今回の答申書案は、国民・消費者から付託された消費者委員会の権限を自ら放棄するものであり、消費者の権利の尊重へ向け「独立して職権を行う」と設置法で保証された消費者委員会委員の、その法的権限すら放棄するものです。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、以下のように、今回の答申書に反対を表明するとともに、消費者委員会に対し、厳重に抗議します。

【記】

1. 実施経過措置「5年」への延長は撤回すべきです 

消費者委員会「食品表示部会」が10月15日に提示した最初の答申書案の付記では、表示実施の経過措置期間について消費者庁が示すような「5年という比較的長い経過措置期間を設ける必然性を確認できない」とし、「消費者庁案は不適当」とする判断を示していました。ところが、2週間後の10月31日の答申書案は、消費者庁からの様々な「出来ない理由」をすべて受け入れ、5年延長などを認める見解を示し、消費者委員会もそれを了承するに至りました。食品表示一元化の検討期間を含めると、実施までに10年以上をかけることになります。「5年延長」の方針はすみやかに撤回すべきです。

2.製造所固有記号は廃止し、製造所名や所在地を記載するという原則に戻すべきです同制度は廃止し、製造所所在地及び製造者の氏名を表示する本来の原則へと戻すべきです。

答申は、同一商品を2つ以上の工場で製造する場合に製造所固有記号の使用を認め、業務用食品をその対象外とする消費者庁案を了承しました。しかし、消費者からのパブリックコメントをはじめ、部会委員の中にも、この措置について反対の意見が散見していました。製造所固有記号は、現在、事業者の利便性を図るためだけの制度であることが、私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」の調査でも判明しています。

3.栄養成分の義務化に関する「小規模対象事業者」を消費税法規定に限定すべきです 

答申は、表示を省略できる小規模事業者の考え方について、「当分の間、中小企業法にもとづく小規模企業者を対象にする」との消費者庁案を了承しました。しかし、すべての加工食品の義務化を前提とすることを踏まえるなら、期間があいまいで、要件に抜け穴の可能性が指摘され、消費者に混乱をきたす消費者庁案は採用すべきではありません。これも事業者の利益のみを考慮し、消費者の権利をまったく尊重していない措置であり、当初の予定の通りに消費税法規定の小規模事業者に限定するとともに、すべての事業者が表示するよう早急に対策を講ずるべきです。

4.栄養強調表示(減塩) 

答申は、ナトリウム量の低減された旨の表示について、25%ルールからしょう油と味噌を除外する消費者庁案を了承しました。このような特例を認めることは、表示についての消費者の混乱を招くことにつながり、特例を認めない基準を示すことこそ、一元化の目的にかなうものです。特例措置は撤回すべきです。

5.任意ナトリウム表示は食塩相当量を前にもってくるべきです 

答申は、栄養成分表示に関するナトリウムの表示に関して、食塩相当量の記載を原則とし、「ただし、ナトリウム塩を添加していない食品に限り、任意でナトリウムの含有量を表示することができるとし、その場合の表示は、ナトリウムの量の次に食塩相当量を括弧書き等で表記する」という消費者庁案を了承しています。消費者が知りたいのは「食塩相当量」であることを考えるなら、任意であっても食塩相当量を統一的に先に記載すべきです。

6.検討に際しての多数決方式採用についてその理由と経緯を明確に説明すべきです

今回の消費者委員会の答申にいたる過程の中で、最も不透明なのは、食品表示部会の検討で、突然、多数決が採用されたことです。また10月15日と31日の検討では、答申書案の結論が180度転換され、全く逆のものとなったことも極めて不透明です。

内閣総理大臣(消費者庁)からの諮問項目について「10月24日時点での各委員意見」が10月31日の部会資料として公表されていますが、ここには、諮問項目に「不賛成」を表明している委員が項目ごとに「3人」から「6人」の範囲で存在しています。最も多い「不賛成」は「製造所固有記号」に関する「6人」で、「経過措置の延長」についても「5人」の「不賛成」が記載されています。しかも、記載されているのは「不賛成」のみであり、消費者庁案に「賛成する」との意見数は記載されていません。

部会の構成を見ると、部会長と部会長代理は消費者委員会委員が兼ねています。この方々がそもそも採決の対象に入るのか議論あるところです。それらの人々を除外すると、委員数は14人となります。14人の中で、「不賛成」を「6人」もの委員が表明するのはどんな事態でしょうか。それを押し切っての「答申」にどんな信頼あるいは信ぴょう性があるというのでしょうか。

また、これまでの議事録を見ても、自らの意見を公の場でまったく表明していない委員がいたり、消費者代表と言われながら、事業者委員から「消費者代表とは考えられない意見」と批判されたりした委員も存在します。委員構成、及び、委員人選、その責任を考慮しない中での、意図的な審議運営だったと思わざるを得ません。

多数決は、およそ「消費者の権利の尊重」を前提とした食品表示に関する検討には馴染まない方式です。事業者の「利益」が消費者の「権利」と比較されることはできません。にもかかわらず、消費者委員会は、消費者と事業者の意見のバランスを考えて検討しているという消費者庁の説明そのままに、「消費者と事業者の利益を調整する」という旧来の「霞が関行政」の悪弊をそのまま受け入れています。

前述したように、部会委員の選任方法をはじめ、部会での少数派の意見をどう尊重するかという民主主義の基本すら考慮しない運営がなされたこと、これは、組織を独善的なものへと導くものです。

この点を踏まえた上で、消費者委員会は、今回の答申について、その過程で、多数決方式を採用したのはなぜか、その理由と経緯を明確に国民・消費者に明らかにするとともに、今一度、「消費者の権利の尊重」と「委員は独立して職権を行う」ことを明記した消費者委員会設置法の精神を遵守することを訴えます。

そして、何よりも、消費者委員会の委員は、同委員会の存在意義が厳しく問われる事態になっていることを真摯に、危機感をもって認識し、消費者の期待に応えられ得る消費者委員会へと適正化を図っていくことを求めます。

以上