2014年7月19日 消費者委員会下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせに対して抗議文を提出

食品表示を考える市民ネットワークは、消費者問題担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、抗議文『不可解な会議運用に関する申し合わせに抗議します~自由闊達に意見を表明できる環境整備を~』(7月19日付)を提出しました。

【抗議文】

私たち食品表示を考える市民ネットワークは、消費者委員会が7月8日、第165回委員会本会議の場で、実質的に自由闊達な意見表明を封殺するような不可解な「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」を了承したことについて抗議します。

これは、消費者委員会が期待される役割を果たし、機能を発揮していくために下部組織の活用が欠かせないことから、その円滑な運用のあり方について共通認識を整理する必要性からまとめられたものとされます。しかし、「運用の在り方に関する申し合わせ」とはいえ、「本申し合わせは各種会議の運営規定の解釈指針として活用されるものとする」とも記載されており、今後の審議運営の「指針」として大きな影響を与えるものと位置付けられます。

この「申し合わせ」の策定理由の説明は極めて抽象的ながら、明らかに同委員会食品表示部会「栄養表示調査会」の審議過程での「熱き議論」の過程を前提にしていると思わざるを得ません。同「申し合わせ」内容には驚くべきことが記載されており、今後の消費者委員会の活動に、自ら重大な制約を課す箇所が少なからず散見します。私たちはこのような「申し合わせ」内容の危険性を消費者委員会の誰一人として指摘することなく、公開の場では反対の意見すら表明されずに、原案が了承されたことを目の当たりにして、極めて危うい事態に消費者委員会が陥っていると懸念せざるを得ません。

消費者委員会及びその下部組織の審議は公開で行われ、委員等は自らの信念に基づき、自らの責任において、公の場で意見を表明するのが消費者・国民の負託に応える委員等のまっとうな姿勢と考えます。しかし、今回の「申し合わせ」には、そのような自由闊達な意見を封殺する仕組みが敢えて導入されており、消費者の実情、消費生活の感覚にもっとも近くにいるべき消費者委員会及びその下部組織について、いっそう硬直化した審議運営へと増強させるものであり、墓穴を掘る行為と思わざるを得ません。この「申し合わせ」が今後の審議運営の「指針」として定着するなら、現在でさえ、審議の場でひとことも意見を表明しない委員等がいる中で、ますます、自由闊達さが削がれ、結局は、行政が提示する既定方針に沿って何も言わないことが最善策とする風潮を生み出しかねません。

私たちは、以下の理由から、今回の「申し合わせ」内容に抗議するとともに、自由闊達な意見表明を保証する環境整備の構築へと消費者委員会の検討姿勢を転換させることを強く求めます。

【記】

1.「申し合わせ」内容で最も大きな問題は「議長」の権限を不必要に強化する一方で、各界の代表として公の場での意見表明を役割とする会議の構成員に対し、礼儀を尽くさない「指針」となっている点です。以下の記述は見直しが必要です。

■発言者が制限時間を超えて発言し又は不穏当な言動があったときは、議長はその者の発言を制止し又は退去させることができる。⇒「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」2議長の権限等(4)

■議長は、会議の進行秩序を維持するために必要があると認めるときは、その秩序を乱し、又は不穏な言動をする者を退去させることができる。⇒2. 議長の権限等(5)

この部分はどんな根拠で策定されたのか不可解と思わざるを得ません。仮に、消費者委員会食品表示部会「栄養表示調査会」での「熱き議論」の経緯を想定されているのなら、この「申し合わせ」の内容は、前提とすべき事実について間違った認識のもとに策定されています。栄養表示調査会での審議経過は、議事録を見ても、新聞報道を見ても、国会での森まさこ大臣の答弁を見ても、調査会運営を担った当時の座長(議長)の議事運営の采配にこそ、問題があったものと考えられます。「不穏当な言動」「秩序を乱す」「退去させる」などの記載は、まさに本末転倒であり、不穏当です。

 

2.資料提出による意見表明について時間規制を設けている点は実効性がなく、提出できるかどうかの判断を議長に委ねているのは事前検閲となります。以下の記述は見直しが必要です。

■資料を提出しようとする構成員等及び参考人は、遅くとも当該資料を提出する回の会議が開催される24時間前までに、消費者委員会事務局を通じて他の構成員等に事前に提供し、⇒4. 資料の提出(2)

■規定する期限までに資料の提供ができない場合は、資料を提出しようとする構成員等及び参考人は、議長たるべき者に当該事由を説明するものとし、議長たるべき者が期限後の提出を認めた場合は、当該資料を会議に提出できるものとする。⇒4.資料の提出(2)

■議長たるべき者は、構成員等及び参考人が提出しようとする資料が、審議事項と無関係であると判断する場合又は当該資料が消費者委員会の品位を損なうものと認められる等の特段の事情がある場合には、当該資料の提出を認めないことができる⇒4. 資料の提出(4)

このような機械的でシステマティックな言論規制は、かつては「官僚主義」と呼ばれました。「24時間前までの提出」を阻むのは、委員等に提供する消費者委員会事務局の会議資料の整理が遅れる場合があることが原因の一つです。

また、委員等が提出する意見・資料の是非を「議長たる者」の判断に委ねるのは「事前検閲」以外のなにものでもありません。こういう記載にも、各界の代表として審議に臨む委員等への礼儀を重んじない「上から目線」の視点が感じられます。

以上の理由から、私たち食品表示を考える市民ネットワークは、今回の消費者委員会「申し合わせ」に厳重に抗議するとともに、一人ひとりの消費者委員会委員に対し、「消費者目線とは何か」「消費者・国民が期待する消費者委員会とは何か」、それを確認した当時の消費者委員会発足時の理念に、いま一度、素直に立ち返ることを切に求めます。

以上

【参考】第165回 消費者委員会本会議資料「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ(確定版)