2015年6月4日 機能性表示制度の見直しを求める意見書を提出

2015年6月4日、消費者担当大臣および消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、機能性表示制度の見直しを求める意見書「能性表示制度は欠陥制度 早急に運用中止し、見直しを求めます ~「ガイドライン」に見る消費者にとっての機能性表示制度の欠陥性~」を提出しました。
機能性表示制度の見直しを求める意見書
「ガイドライン」の欠陥性 概略

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、「欠陥制度」であることから導入を見直すようにと政府に要求してきた食品の「機能性表示制度」が4月1日、拙速のまま導入されました。すでに、販売60日前の届出と届出情報の公開制度によって、5月29日現在、26製品が届出受理されたことが消費者庁ホームページで公開されています。しかし、すでに、そのいくつかについて、安全性及び機能性に関するデータへの疑義が提起されており、消費者の混乱は増す一方となっています。

この制度創設に際して参考とされたアメリカには、「ダイエタリーサプリメント健康教育法」(DSHEA=ドシエ)という規制法があり、錠剤・カプセル型のサプリメントについて事業者の法的義務が規定されています。

しかし、日本の機能性表示制度は、法の制定・改正をまったく伴わない規制緩和を前提に設計されたもので、その運用は、抜け穴だらけで法的拘束力もない「ガイドライン」(指針)に、基づいて行われることとなりました。

この機能性表示は事業者の責任で実施し、消費者庁は安全性・機能性の科学的根拠について評価・関与しないという制度です。その旨が包装表示にも義務付けられることになっています。消費者目線よりも、アベノミクスの「成長戦略」に基づく事業者の規制緩和を優先した無責任な制度としてスタートしたものです。

制度設計にあたって安倍晋三首相は、「世界で一番企業が活動しやすい国をめざす」とし、その具体例として機能性表示制度を挙げたことはあまりに有名です。

しかし、その結果として、次のような問題が浮上することになりました。

 

  1. 特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品制度の3つの制度が併存することになり、従来の「いわゆる健康食品」の販売とあわせ、表示の混乱が生じています。「機能性表示まがい食品」が以前から横行しているのに、その監視・チェック体制は整備されていません。
  2. 現行トクホ、栄養機能食品、医薬部外品の許可表示などと機能性表示との表示に関する混乱が生じています。
  3. 健康被害情報の事業者の報告義務・公表義務制度がないことから、ますます健康被害が潜在化していきます。
  4. GMP(適正製造規範)制度の義務化がないことから、品質への信頼性も担保されないままのスタートとなりました。
  5. チェック機能が発揮される保証がないことから、行政も業界も運用にあたって手探り状態がしばらく続きます。その間も消費者被害(健康被害・財産被害)は増加していきます。
  6. 機能性表示は「いわゆる健康食品」の表示の規制にはつながりません。それは、トクホ制度創設によっては誇大・誤認表示がなくならなかったことと同様です。むしろ、「いわゆる健康食品」の誇大・誤認・虚偽・あいまい・ほのめかし・体験談表示等、不当な表示を助長させる結果となっています。
  7. 制度への理解を求める「消費者教育」が強調され、理不尽な「消費者の責任論」が主張される温床ともなっています。制度創設によって、もっとも迷惑を被るのは消費者であることがますますはっきりしてきました。機能性表示制度は欠陥を持つ「欠陥制度」なのに、その欠陥制度を消費者に理解してもらおうと消費者教育の対象にすること自体が本末転倒です。
  8. しかも、新規に導入されたはずの「申出制度」が当初の消費者庁の説明とは異なっていることがわかり、申出制度の十分な機能が発揮できずに形骸化する可能性があることも判明しました。販売60日前の届出と、届出情報の公開にも時間差があることから、公開の意義が薄れ、「申出制度」を利用しようとする消費者に混乱を与えています。

 

そこで、消費者被害を防止し、社会的混乱を解消し、食品表示の適正化を図るために、私たちは以下の3点を緊急に要望します。

(1)機能性表示制度の運用停止および3つの制度の総合的・一元的な見直し検討に速やかに着手(2年後見直しを待たずに)すること 

(2)「いわゆる健康食品」への法的規制の強化・導入と、市販後調査の実施、およびその結果を公開する制度的導入(事後規制の強化)を図ること

(3)消費者被害防止への各種制度創設食品事故情報の報告義務化、リコール基本法の制定検討に着手するとともに、

食品表示法の申出制度を抜本的に見直し、調査結果の申出人への通知や、異議申し立て制度も保証した「スーパーコンプレインツ制度」へと速やかに改正を図ること

導入された機能性食品制度では、その実際の商品が販売される前から研究データをめぐる不適切・不適正な運用が散見しています。これは制度自体に問題があることを示し、制度運用を適切に実施することを目的としたガイドラインにも重大な欠陥があることを示しています。

私たちは、運用の核となるガイドラインの課題、その欠陥性を指摘することで、再度、同制度運用の即刻中止・見直しを求めます。

以上