トクホ違反横行に抗議する要望書を提出 10月7日 

2016年10月7日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てにトクホ違反横行に抗議する要望書「トクホ違反横行に抗議します~保健機能食品制度の総合的抜本改善を~」を提出しました。
トクホ違反横行に抗議します ~保健機能食品制度の総合的抜本改善を~

消費者庁は日本サプリメント社のトクホ(特定保健用食品)6品目について9月23日、表示許可取消を措置しました。次いで、9月27日には、業界団体の公益財団法人日本健康・栄養食品協会を通じて、すべてのトクホ約1200品目について、成分含有量調査や販売実績、失効予定などについて調査するよう要請し、10月26日までの回答を求めました。さらに9月30日には改めて事業者による自主点検の推進を求める要請文を発表しました。

一連の同庁の対応は日本サプリメント社の表示許可取消要因となった関与成分が含有されていなかった事実や、含有していても規定値に満たないものだったこと、さらに、その事実を同社が把握してから少なくとも2年以上も消費者庁に報告しなかったこと、など、同社の極めて悪質な行為が背景にあるとされています。実際、日本サプリメント社は2014年3月にも許可表示とは異なる表示で販売していた例があり、当時の消費者庁長官が「誠に遺憾」として再発防止を指示したことを記者会見で報告したこともありました。

しかし、私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、今回の消費者庁の一連の措置は同社の悪質性以外に別の重大な事実を示したという、そのことにこそ驚愕しています。

トクホの表示許可は消費者庁などの関与のもとに実施されます。許可した消費者庁は許可時の要件が市販後も維持されていることを常に確認することが果たすべき責務であるはずです。そのことが国民・消費者からの重大な付託であるからです。ところが今回の「事件」はそのことを消費者庁においてどの職員も全く認識していなかったことを教えました。それが分かった段階で、トクホ制度の信頼性は崩壊したと言えます。消費者への重大な裏切り行為を蔓延させる無責任体制となっていたこと、この深刻な事実が提示されたのです。

今回の「事件」は、まさにこの「無責任体制のまん延」を示す象徴的出来事です。日本サプリメント社が消費者庁に報告しなかったら、さらに違反行為は継続されていたこと、許可を与えた消費者庁自身が現在の市販トクホについて何ら実態を把握していなかったこと、一義的責任がある事業者及び事業者団体に対して事が起こってからの対応を迫るのみで、許可責任者として自らが真に再発防止につながる実効性ある施策を提示できないでいること、もっとも重要なのは、このような事件発生の原因究明に消費者庁自身が取り組む気概を見せていないことです。一過性の「事件」として済まそうとするなら、もはや消費者庁の存在価値はなく、消費者にとっては必要悪でしかありません。

それは消費者委員会に対しても言えることです。消費者委員会は、トクホ表示許可にあたって意見を述べる機会を有しています。しかし、今回の「事件」に際しては、いまだに具体的対応すら見られません。静観は許されません。消費者目線から文書による意見を発信し、時計を前へ進めることこそ消費者委員会の役割であるからです。

このような消費者目線に立って消費者の痛みを胸に感じることのできる行政機関が存在しないからこそ、今回の事件は起きたと私たちは考えます。そこで、このような事態に厳重に抗議するとともに、下記項目を要望します。

なお、10月31日までに要望に対する方針など、ご回答をお願いします。

  1. 消費者庁は、今回の「事件」を時系列的に究明し、日本サプリメント社が販売した問題トクホの販売数、売上額を過去にさかのぼって総合的に明らかにし、公表すること。特に、「事件」発生の原因究明に速やかに取り組み、同社が違反に至った要因と消費者庁の監視・チェックの実態、その課題、事前に違反を把握できなかった要因を明確にすること
  1. 消費者庁は、「事件」公表後の日本サプリメント社の消費者対応を把握し、問い合わせ電話がつながらない消費者苦情がまん延していることを重視し、消費者目線からの消費者対応をとるよう同社を指導すること
  1. 消費者庁はあらゆる執行法律を勘案し、日本サプリメント社に対し、課徴金の賦課をはじめ、厳しい法的処分を下すこと
  1. 消費者庁は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会に要請した10月26日を期日とする調査結果を公開すること。あわせて、今年5月に機能性表示食品検討会で報告した機能性表示食品の事後調査の結果も早急に公開すること。いずれの公開も実施しない場合はその理由を説明すること
  1. 消費者委員会は、今回の「事件」についてトクホ許可の審査に関わる消費者委員会として、その自らの態度を、意見・提言・建議などいずれの形態にかかわらず、消費者・国民及び消費者庁に対して文書で明らかにすること
  1. 消費者委員会は、消費者庁および関連省庁のトクホ関連施策について、消費者目線から調査し、今回の「事件」がなぜ発生したのか、なぜ防止できなかったのか、その責任所在も含め、再発防止への政策提案を提示すること
  1. 消費者委員会は、平成23年6月23日付の「特定保健用食品の表示許可制度専門委員会」報告書で更新制度導入の検討を消費者庁に求めている経緯を重視し、同制度を早急に導入するよう消費者庁に働きかけること
  1. 消費者の信頼回復と適正な表示制度へ向けて、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品など各種保健機能食品制度を総合的・一元的に捉え、それら現行制度を抜本的に改善する検討に早急に着手すること

以上