2014年10月10日 消費者庁が提示したパブコメ後の食品表示基準変更案へ意見書を提出

役割果たさない消費者行政、消費者目線しっかり持って ~逆戻りの「事業者優先」、消費者の権利を尊重し新食品表示基準見直しを~

2014年10月10日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、消費者庁が提示したパブコメ後の食品表示基準変更案へ意見書を提出しました。

食品表示基準変更案への意見書

消費者庁は9月24日、新しい食品表示基準案を消費者委員会食品表示部会の会合で公表しました。パブリックコメントの結果を踏まえたとされながら、その内容は当初案以上に、大幅な緩和措置が盛り込まれています。食品事業者の意向を重視し、その要望のみを受け入れたものと思わざるを得ません。中にはこれまで検討もされてこなかった事業者向け例外措置も含まれており、事業者寄り基準案となっていることが最大の特徴です。

また、パブリックコメントが実施され、その結果を集計中の「機能性表示制度」に関する食品表示基準案も事業者優先の措置が随所に散見し、「消費者目線」が反映されていません。消費者被害をかえって増長させるものと判断せざるを得ません。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」では、食品表示法で明記された理念に沿って、安全の確保や知らされる権利、合理的選択のできる権利など、「消費者の権利」を尊重する表示基準となるよう、たびたび消費者庁及び消費者委員会に要望してきました。

しかし今回提示されたこれらの食品表示基準案は、消費者が指摘してきた当初の不十分な「案」以上に後退したものであり、消費者の権利をないがしろにするものです。

以下、「全般的要望」及び「個別的要望」について、その理由と、改善項目を提起します。

【全般的要望と改善措置要求】

  1. 表示基準案について パブリックコメントの集計・分析結果の概要が公表されたが、消費者庁が採用した事業者の意見の中には、栄養成分表示の義務化対象から除外される事業者の範囲についての実態把握など、消費者庁自らその事実確認をしていない項目があることが明らかになりました。不明確な事業者の意見のみを施策に反映させ、消費者側からの意見をほとんど採用していない理由について、消費者庁はきちんとした説明責任を果たすことを求めます。
  2. 新表示基準実施までの猶予期間が「加工食品2年」「添加物1年」となっていた当初の基準案が「5年」へと突然延長され、「生鮮品」も「法施行と同時」だったものが「1年半」へと延長されています。この表示実施の猶予期間延長は事業者からの要望と思われますが、消費者庁が「5年」とする判断に突然踏み切った理由と経緯について、消費者・国民に明確な納得ある説明を求めます。
  3.  消費者行政を監視する機能を持つ消費者委員会は、「報告書」で提示した自らの意見と「消費者庁案」として提示された基準案変更内容について、その違いを深刻に受け止めるとともに、「諮問―答申」の形ではなく、消費者庁案に対する消費者委員会としての自らの意見を文書にて早急に表明すること。消費者委員会に国民から付託された第三者機関としての主体性をもち、独自の監視機能の責任をきちんと果たすことを求めます。
  4.  消費者庁は機能性表示制度について消費者被害防止の観点から、より「消費者目線」に立った制度設計を再検討すること。 

 【個別的要望と改善措置要求】

  1. 「加工食品」「添加物」「生鮮食品」の経過措置期間をそれぞれ「2年」「1年」「施行同時」から「5年」「1年半」へと延長する措置は、消費者の権利を軽視する措置であることから、撤回を求めます。
  2.  製造所固有記号を廃止し、製造所及びその所在地を明記するという本来の原則に戻すことを求めます。
  3.  業務用食品について、製造所及びその所在地を消費者に知らせる対象から「除く」とする変更措置については、業務用・消費者用の区別がなくなりつつあることや、その区別を行政が把握できていない現状にあっては、この措置の撤回を求めます。
  4.  ナトリウムの表示について、義務表示としてのナトリウムの量については、「食塩相当量」で表示するとなっており、当初のパブコメ案では、「食塩相当量の次にナトリウムの量を括弧書き等で併記する」となっていたのを、任意に「ナトリウム」の量を表示する場合、「ナトリウムの量の次に(食塩相当量)を記載すること」とする変更案が示されました。この消費者庁の変更案は、食塩摂取の低減などを求める消費者の意向に反するものであり、かえってわかりにくい表示となるため、この変更案の撤回を求めます。
  5.  栄養成分表示の義務化についての小規模事業者の考え方について、パブコメ案では「消費税法九条に規定する小規模事業者(課税売上高が1,000万円以下の事業者)」としていたのを、「当分の間、中小企業基本法で規定する小規模企業者(常時の従業員数20人以下、農業・サービス業に属する事業を主たる事業として営む事業者については5人以下)などについて栄養成分表示の省略を認める」と変更案が提示されました。当初案である前者の方が行政も把握・監視できるという点で、より現実的・妥当です。しかも、提示された「当面」の措置としての中小企業法での「小規模企業者」では、比較的規模の大きな事業者に対しても対象外となる可能性があります。従って、この変更措置の撤回を求めます。
  6.  栄養強調表示に係るルールの見直し、低減強調表示については、一律に「25%以上の相対差が必要」とのパブリックコメント案に対し、消費者庁は「ナトリウムについては、食品の製造工程上、25%以上その量を低減することが困難な食品については、相対差について特例を認める」との変更案を示しました。これは特定の事業者の意向を踏まえたものであり、「特例を認める」ことは大きな後退と言わざるを得ません。変更案の撤回を求めます。
  7.  変更案の対象外となっているトランス脂肪酸については、リスク回避を求める「消費者の権利」を踏まえ、栄養成分の義務表示に含めることを求めます。

このように、食品表示基準案は、重大な問題を含んでいます。早急な対応を図るとともに、食品表示基準策定で後回しにされている「加工食品の原料原産地表示」「食品添加物の表示」「遺伝子組み換え食品表示」に関しても、早急な全面見直し検討に着手することを求めます。                              以上の意見に対して、文書による回答を10月20日までに下記連絡先まで送付願います。

以上