2015年9月3日 意見書「欠陥制度である機能性表示食品制度の運用停止・廃止を求めます」を提出

2015年9月3日、消費者担当大臣。消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、意見書「欠陥制度である機能性表示食品制度の運用停止・廃止を求めます~早急にトクホ・栄養機能食品制度など総合的・一元的見直し検討に着手して下さい~」を提出しました。
機能性表示食品に対する意見書

9月1日付けマスコミ報道によると、消費者庁は8月31日、特定保健用食品(トクホ)の審査では安全性が確認できないという評価結果が出た関与成分について、その成分を含む食品を機能性表示食品として販売されることに対しては当該事業者に届け出の撤回を求めないことを決定した、とのことです。

このことは、トクホとしては安全性が確認されないのに、機能性表示食品としては、健康に良い作用のある成分として表示・販売される、ということを国として許容したことを意味し、食品の「安全行政」と「表示行政」、その施策遂行において重大な矛盾・不整合性をはらむものであることを示しました。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、機能性表示食品の制度自体に、このような矛盾、不整合、混乱を発生させる仕組みと欠陥があることを指摘し、これまで、機能性表示食品制度の廃止と、トクホ及び栄養機能食品制度などを含めた総合的で統一的な見直し検討に早急に着手すべきであることを消費者庁及び消費者委員会に強く求めてきました。

ところがそれ以降も消費者庁及び消費者委員会は、機能性表示食品制度への対応において、事態の推移を放置・傍観し、消費者庁にあっては私たちが「欠陥ガイドライン」と指摘した「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の形式的審査に依拠するのみで、消費者行政の一元化と司令塔機能の発揮という自らの使命を放棄し、消費者委員会にあっては、法で明記された消費者のための勧告権を行使する必要性を一片も検討することなく、いずれも、私たち消費者の期待感をことごとく裏切る状況を招いてしまっています。今や、消費者行政は、かつての企業利益を優先した企業育成行政へと軸足を移しつつあると思わざるを得ません。

私たちは、以下の理由から、機能性表示食品制度が消費者の混乱を拡大させ、消費者の健康被害や経済的被害を拡大させ、結果的に食品及び食品業界の信頼感を喪失させる欠陥制度であること、それに対し、消費者庁及び消費者委員会が、制度運用の停止を決定・勧告し、早急に総合的見直し検討に入ることを表明するよう、改めて強く求めます。

1.欠陥制度は消費者被害を拡大させます

「安全性が確認されない」と科学的に評価された成分が、健康に良い作用を持つ成分であると表示され販売されることを許容する制度は、制度それ自体に重大な欠陥があることを示しています。施策の矛盾を正当化する欠陥制度を放置したままでは、消費者被害はさらに増加していきます。

2.機能性表示制度は消費者の権利を尊重しない政府の失策・失政です

機能性表示食品制度は、消費者の権利よりも企業の利益を優先したものであることは2013年の「規制改革会議」の審議をはじめ、同制度の企画・立案・審議・導入過程で明らかとなっています。消費者被害の発生増加が十分予想されるのに、その予防措置すら不十分なままに、急ぎ導入したことは、欠陥制度策定という失策に加え、その運用を推進するという消費者行政の失政以外のなにものでもありません。

3.事業者の利益優先で運用される「欠陥ガイドライン」も問題です

制度運用の基本となる「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」は、できるだけ事業者の届出を簡易にするための欠陥ガイドラインです。事業者が届け出るデータは科学的根拠が厳密でないものでも採用を可能とするもので、基本的には事業者の合理的説明で良しとする内容です。実際、そのガイドラインに沿った資料が届け出されているのです。このようなガイドラインに依拠する限り、欠陥制度はいっそう拡大し、消費者の権利は侵害され、消費者の利益は損なわれていきます。

4.健康被害情報(事故情報)の報告義務と公表制度がない中では被害は潜在化します

8月31日の記者会見で消費者庁の板東久美子長官は、当該事業者に「発売後に健康被害情報の収集などを行うよう要請した」とし、健康被害が発生した後の対応を注視している発言が報道されていますが、機能性表示食品制度は、事業者に健康被害情報の収集を求めているものの、消費者からの通報制度は明快にしていませんし、その報告と公開については義務付けていません。重大事故についても、原因が当該機能性表示食品と関わりがあるとわかった段階での公開であり、食品と健康被害の因果関係の検証を事業者の判断にゆだねています。実際、「ガイドライン」では、事故情報の収集を事業者に要請しているものの、その報告と公開については、しなくても良いことになっています。このような報告義務と公開制度のない状況のままでは被害の予防処置とはなりえず消費者被害が潜在化・深刻化し、一般に判明するときは大事故に発展した後のこととなります。

5.欠陥制度を啓発事業や消費者教育の対象にすることは本末転倒です

機能性表示食品制度の導入時には、消費者への情報提供とあわせ、制度の理解へ向けた消費者教育の推進が謳われました。しかし、そもそも欠陥制度を理解してもらおうと消費者への啓発活動や消費者教育推進の対象にすること自体、本末転倒です。消費者行政自らが、消費者に混乱を与え続けていくものです。

6.現行食品表示法は機能性表示食品制度に対し、監視チェックが効きません

食品表示法に基づく「申出制度」と「販売前の届出資料公開制度」は、運用実態から見ると、いずれも機能性表示食品制度に対しては監視機能が効かず、消費者にとっては意義の薄いものです。「販売前60日の届出」も、60日間の公開ではないことから、現在は公開制度の不十分性を補完するだけのものであり、消費者の「知らされる権利」「安全の権利」「選択する権利」が尊重されていません。

7.制度を廃止し、トクホ等含め総合的検討への着手を

機能性表示食品の登場で、現在、機能性を表示できる食品はトクホと栄養機能食品を含め三種類存在しています。これに加え、「いわゆる健康食品」についても、その表示には機能性をほのめかしたり、暗示したりする記述が横行しているのが実態です。消費者にとっては混乱以外のなにものでもなく、被害拡大の温床となっています。消費者庁及び消費者委員会は、消費者被害の防止と救済へ向け、欠陥制度である機能性表示制度を速やかに廃止し、トクホ、栄養機能食品を含めた総合的・一元的検討に着手すべきです。それこそが、消費者の期待を背に発足したはずの消費者庁及び消費者委員会の使命と考えます。

以上