1月28日、食品安全監視体制の抜本的強化・充実を求める要望書を提出しました。

2016年1月28日、内閣総理大臣および、厚生労働大臣、農林水産大臣、環境大臣、消費者及び食品安全担当大臣、消費者庁長官宛てに、要望書「食品安全監視体制の抜本的強化・充実を~教訓化されない汚染米事件、廃棄ビーフカツの再販売事件は氷山の一角です~」を提出しました。

食品安全監視体制の抜本的強化・充実を求める要望書

1月13日に発覚した廃棄対象食品の「横流し・再販売事件」は、日本の食の安全性がまったく確保されていない危険な状況に置かれていることを示しました。端緒となった大量のビーフカツを販売していた店舗数は愛知県だけでもビーフカツの65施設、弁当製造の24施設、卸売業者20事業所にものぼっています(1月21日現在)。食べてはいけない「横流し食品」はビーフカツに留まらず、チキンカツ、びんちょうマグロ、フライドポテト、チョコレート、お菓子、竹の子煮、ソーセージ、味噌、インスタント味噌汁など108品目にまで拡大し、それらほとんどの流通先はいまだ不明のままです。広域・大規模な違反食品販売が放置され続けてきたことが明らかになっています。

管轄行政機関による調査はいまだ終結をみていませんが、私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、今回の事件発覚が、店舗で市販品を偶然に見た関連従業員による通報を契機としたことを考えると、食品安全監視体制がほとんど機能していない全くの「無法地帯」となっている実態を示したものであり、今回のような危険食品の違法販売は氷山の一角であると断言せざるを得ません。

今回の事件は2008年の「事故米不正転売事件」(工業用の汚染米を食用として横流ししていたことが発覚し、米トレーサビリティ法制定の契機となった事件)をまったく教訓化しておらず、食品の安全性を省みない、ただただ事業者利益のみを優先した、消費者の安全の権利を踏みにじる極めて重大な悪質行為と位置付けられます。国内製造品のみならず、日々増加している輸入食品への監視チェックの不十分性をも示唆するものであり、消費者の食品全般への不安感をいっそう高めることとなりました。

さらに1月21日には、福島県内の小中学校でヒスタミン食中毒事故も発生しました。加工会社から納入されたサンマのすり身が、事業者間取引の過程で期限表示ラベルがはがされ、冷凍保存され、消費期限を5カ月も超過したまま、給食の食材として利用されてしまい、87人もの児童・生徒などが生命を危険にさらされる重大なヒスタミン中毒の被害を被ったという深刻な事故です。より安全であるべき給食の食材も一向に安全ではないことが明らかになりました。適正な表示・情報が事業者間で伝達されないままのトレーサビリティ不在と食品安全監視機能不全の現状は、今後も重大事故を招く温床ともなっています。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、これら一連の事件・事故で明らかになった点を示すとともに、以下のように、早急な食の安全監視体制の抜本的強化・充実を求めます。

◎これらの事件・事故で明らかになったこと

(1) 廃棄対象食品に関する処分実態の不透明性

■食品メーカー等廃棄委託事業者の廃棄作業の確認・チェックの不十分性

■管轄行政機関の廃棄事業者の確認・チェックの不十分性

■再流通・再販売などの違法食品に関する販売事業者の確認・チェックの不十分性

■再流通・再販売品などの違法販売品に関する表示監視の不十分性

■トレーサビリティ体制(追跡可能体制)の不十分性と行政監視機能の欠落

(2) 自主回収食品の対応実態の不透明性

■自主回収食品の廃棄及び改善後に再流通する際の監視チェックの不十分性

■自主回収食品の改善後再販売される際の表示の不十分性

以上の問題点を踏まえ、下記項目を要望します。

1.廃棄物処理法、食品リサイクル法等の運用・監視機能の強化を

■契約書・マニフェスト(産業廃棄物管理票)・帳簿類の監視・チェック体制強化

■飼料・肥料・堆肥等へのリサイクル転用に関する監視・チェック体制の強化

2.食品安全監視体制充実への人員・予算の拡充と食品トレーサビリティ法の制定を

■食品添加物を含む食品表示監視全般について消費者庁だけではなく厚生労働省・農水省と共管・連携する体制の整備・充実を図ること

■国内流通食品の品質・表示に関する監視体制の強化・充実を図ること

■食品衛生法を改正し、申告制度を導入すること

給食の食材を含む食品全般を網羅した食品トレーサビリティ法制度を制定・導入すること

3.輸入食品の監視体制の強化を■輸入食品における積戻しや廃棄対象食品等の処分実態の調査と結果の公開

■輸入食品表示の監視を消費者庁と厚生労働省の共管とし、監視・チェック体制の整備・強化・充実を図る

4.食品を含むすべての消費者関連商品・製品対象の「リコール基本法」(仮称)制定を

 

今回の事件では、違反食品摂食による事故発生が明確でないことへの懸念や、自主回収品等の処分実態が不明な商品があること等が問題となりました。事態改善には、私たちが従来から主張してきたように、すべての消費者関連商品・製品のリコール対応について、事業者・行政の責任等を明記した業界横断的な「リコール基本法」(仮称)の制定も急務と考えます。同法には次の規定を盛り込むことが必要です。

■安全性に関連した自主回収の報告義務化の創設と違反事業者への罰則導入

■食品を含むすべての消費者関連商品・製品に関する輸入・製造業者、流通・販売事業者を対象にした事故情報報告義務化と事故情報公開制度の導入

■回収商品・製品の対応状況に関する消費者への情報提供や廃棄を担う環境行政と消費者行政との連携した取組の確保・推進等、透明性を確保する旨の規定等。

以上