活動報告

活動

トクホ(特定保健用食品)関する意見書「保健機能食品の事後チェック体制の整備・強化を」を提出しました

2016年11月23日付で消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てにトクホ(特定保健用食品)関する意見書「保健機能食品の事後チェック体制の整備・強化を」を提出しました。

トクホに関する意見書 

11月2日、消費者庁はトクホ(特定保健用食品)に次いで特別用途食品にも成分規定量が不適正な食品が販売されていたことを明らかにしました。国が許可したのに許可通りに販売されているのかどうか、国の市販後チェックが全く取り組まれず、事業者任せのまま制度が運用されてきた無責任体制がこのような事態を招いた大きな要因です。

すでに関与成分量が届出通りではない機能性表示食品の販売も判明し、私たち食品表示を考える市民ネットワークが商品名の公開を求めている事案もあります。現在の深刻な事態は、保健機能食品の分野にあって、事業者の規制緩和が推進される一方、消費者の権利確保の視点が欠落し、消費者保護策がどんどん後退してきた結果と言えます。今やチェック機能の働かない保健機能食品の制度全体の欠陥性が浮きぼりになったと思わざるを得ません。

私たちは、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品などの総合的・一元的見直しを訴えてきました。今回新たに特別用途食品の不祥事が発覚したことで、保健機能食品制度全体の見直し・改善が喫緊の課題として提起されていると考えざるを得ません。このような深刻事態を踏まえて、改めて以下の点を要望します。

  1. 事故情報(健康被害情報)の報告を義務化すること

今回不適正な成分量が判明した特別用途食品は、許可64品目中の2品目です。商品分類は「低たんぱく食品」であり、病院の患者用食品として活用されたり、また通信販売によって自宅療養の腎不全の方々に提供・利用されたりしてきました。許可されて以降、この規格外食品がいつから販売され、なぜ防止できなかったのか、今の段階では明確ではありません。消費者庁は「健康被害の報告は寄せられていない」「事業者からもそのような報告はない」としていますが、健康被害情報(事故情報)の報告義務がすべての医療機関をはじめ、事業者に課せられていない現状ではその確証はありません。健康に影響を与える食品だからこそ健康情報の一元的収集体制の整備は急務です。当面は緊急性を重視し、保健機能食品全般を対象とした「事故情報(健康被害情報)の報告義務化」を導入してください。

  1. 事後チェック体制を制度として確立し、そのチェック結果を事業者名・商品名を含めて公表する制度として導入すること

今回のトクホや特別用途食品の全品調査要請は“日本サプリメント事件”が発端です。全品調査を同事件への対応として一過性のものとして扱わずに、制度として継続的に位置付けてください。そもそも日本サプリメント事件は、事後チェックが実施されていない制度上の欠陥を一因として発生したものです。市販後チェック体制を国の責任として導入するとともに監視結果の公表が必要です。事後チェックと結果の公表は必須です。

  1. 実効性ある再審制の運用と共に、早急に再審制を導入すること

トクホの全品調査では、1271品目中903品目が、現在販売されていない品目として指摘されました。そのうち668品目は、販売休眠中ながら再販売される可能性のある商品とも推測されます。また、販売されている366品目の中には、長期間継続販売されているものもあります。消費者庁は一度許可したトクホをチェックすることもなく、漫然と許可し続け、その結果、現在の深刻な無責任体制が定着してしまいました。平成23年に消費者委員会専門調査会が要求したように、更新制度を導入すべきです。それを導入するまでの間は、内閣府令で規定する再審制を確実に運用し、また、再販売トクホなどに対して一定の条件を設定し、再審査に付す仕組みを導入してください。

  1. 許可の取消規定を厳格に運用し、休眠中のトクホには失効を促す仕組みを導入すること

トクホや特別用途食品では、許可取消要件が規定されていますが、これら取消規定の運用は極めてあいまいで、3月のライオン社製のトクホ問題のように虚偽表示でありながら取り消されないこともあります。表示と実態の違いなどを理由とする許可取消要件はあいまいなままとなっています。また、今回の特別用途食品の不適切な成分含有量の問題に示されたように、取消ではなく事業者による失効届けで対処される例もあります。取消規定を厳しく運用してください。

  1. 規格に合致しない不正な保健機能食品の販売が判明した場合は、販売中止だけではなく、速やかに回収させるとともに行政処分を迅速に課す措置を講ずること

保健機能食品は食品の中で特定の保健機能が表示できる食品であり、成分や成分量について申請通りでない場合は健康被害発生の原因ともなります。それは機能性表示食品についても同様です。この点を重視し、不正発覚の段階で販売中止とリコールなど早急な対処がとれるよう、迅速な処分措置が講じられる仕組みを検討してください。

  1. GMP(製造・品櫃管理基準)及び第三者評価を義務付けること

機能性表示食品を含む保健機能食品の全製品を対象にGMPの義務化や申請・届出資料に第三者評価結果の添付を義務付けること。

  1. 以上の改善策の実現に向けて、総合的・一元的検討に着手すること

健康増進法で規定されるトクホと特別用途食品、食品表示法で規定され、事業者の責任で表示できる機能性表示食品など、現在の監視・評価体制がバラバラの保健機能食品制度を総合的・一元的に見直すことが必要です。

以上

2016年11月23日

チーム活動・勉強会「食品添加物基礎知識」について 2016年9月29日

食品表示を考える市民ネットワークではテーマ別にチームを作り勉強会や意見交換等を実施しています。その際使用した資料を随時掲載していく予定です。今回は弊会代表で弁護士の神山美智子による勉強会のレジュメを掲載いたします。

食品添加物基礎知識

1 添加物とは

定義 食品衛生法4条2

この法律で添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物をいう。

2 添加物の指定制 同10条

人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

 原則禁止 例外 天然香料(3102リスト)・一般飲食物添加物(

指定添加物 食品衛生法施行規則12条 別表第一 

  1   亜鉛塩類(グルコン酸亜鉛及び硫酸亜鉛に限る。)から

449 リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプンまで

 既存添加物 食品衛生法付則2条 次長通知別添1 既存添加物名簿

 最終改正 平成26年1月30日 登録品目数 365品目

  厚生大臣は、次に掲げる添加物(第一条の規定による改正前の食品衛生法(以下「旧食品衛生法」という。)第二条第三項に規定する化学的合成品たる添加物並びに第一条の規定による改正後の食品衛生法(以下「新食品衛生法」という。)第二条第三項に規定する天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものを除く。)の名称を記載した表(以下「既存添加物名簿」という。)を作成し、これをこの法律の公布の日から三月以内に公示しなければならない。

 この法律の公布の際現に販売され、又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されている添加物

 この法律の公布の際現に販売され、又は販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、若しくは陳列されている製剤又は食品に含まれる添加物

 何人も、前項の規定により公示された既存添加物名簿に関し、訂正する必要があると認めるときは、厚生省令で定めるところにより、その公示の日から六月以内に限り、その旨を厚生大臣に申し出ることができる。

 厚生大臣は、前項の申出があった場合において、その申出に理由があると認めるときは、その申出に係る添加物の名称を既存添加物名簿に追加し、又は既存添 加物名簿から消除するとともに、その旨をその申出をした者に通知しなければならない。

 厚生大臣は、前項の規定による追加又は消除を行った既存添加物名簿をこの法律の施行の日(以下「施行日」という。)の一月前までに公示しなければならない。

3 規格基準 同11条

  厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる。

 前項の規定により基準又は規格が定められたときは、その基準に合わない方法により食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、調理し、若しくは保存し、その基準に合わない方法による食品若しくは添加物を販売し、若しくは輸入し、又はその規格に合わない食品若しくは添加物を製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、若しくは販売してはならない。

4 添加物公定書 同21条

  厚生労働大臣及び内閣総理大臣は、食品添加物公定書を作成し、第十一条第一項の規定により基準又は規格が定められた添加物及び食品表示法第四条第一項 の規定により基準が定められた添加物につき当該基準及び規格を収載するものとする

5 添加物の表示 食品表示法 4条

内閣総理大臣は、内閣府令で、食品及び食品関連事業者等の区分ごとに、次に掲げる事項のうち当該区分に属する食品を消費者が安全に摂取し、及び自主的かつ合理的に選択するために必要と認められる事項を内容とする販売の用に供する食品に関する表示の基準を定めなければならない。

 名称、アレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質をいう。第六条第八項及び第十一条において同じ。)、保存の方法、消費期限(食品を摂取する際の安全性の判断に資する期限をいう。第六条第八項及び第十一条において同じ。)、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産地その他食品関連事業者等が食品の販売をする際に表示されるべき事項

 表示の方法その他前号に掲げる事項を表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項

 内閣総理大臣は、前項の規定により販売の用に供する食品に関する表示の基準を定めようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣、農林水産大臣及び財務大臣に協議するとともに、消費者委員会の意見を聴かなければならない。

 厚生労働大臣は、第一項の規定により販売の用に供する食品に関する表示の基準が定められることにより、国民の健康の保護又は増進が図られると認めるときは、内閣総理大臣に対し、当該基準の案を添えて、その策定を要請することができる。

 農林水産大臣は、第一項の規定により販売の用に供する食品に関する表示の基準が定められることにより、当該基準に係る食品(酒類を除く。)の生産若しくは流通の円滑化又は消費者の需要に即した当該食品の生産の振興が図られると認めるときは、内閣総理大臣に対し、当該基準の案を添えて、その策定を要請することができる。

6 表示基準 同法5条 

食品関連事業者等は、食品表示基準 に従った表示がされていない食品の販売をしてはならない。

食品表示基準 平成二十七年三月二十日内閣府令第十号

  第3条 加工食品の横断的表示義務 添加物

  原則 重量順に物質名表示、8用途は併記

  例外 栄養強化・加工助剤・キャリーオーバー

添加物 1 次に掲げるものを除き、添加物に占める重量の割合の高いものから順に、別表第六の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名及び同表の下欄に掲げる用途の表示を、それ以外の添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名を表示する。
一 栄養強化の目的で使用されるもの(特別用途食品及び機能性表示食品を除く。)
二 加工助剤(食品の加工の際に添加されるものであって、当該食品の完成前に除去されるもの、当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの又は当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないものをいう。以下同じ。)
三 キャリーオーバー(食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には当該添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないものをいう。以下同じ。)
2 1の規定にかかわらず、複数の加工食品により構成される加工食品にあっては、各構成要素で使用した添加物を、各構成要素を表す一般的な名称の次に括弧を付して、1に定めるところにより表示することができる。
3 1の規定にかかわらず、添加物の物質名の表示は、一般に広く使用されている名称を有する添加物にあっては、その名称をもって、別表第七の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては同表の下欄に掲げる表示をもって、これに代えることができる。
4 1の規定にかかわらず、次に掲げる場合にあってはそれぞれ当該各号に掲げる用途の表示を省略することができる。
一 添加物を含む旨の表示中「色」の文字を含む場合 着色料又は合成着色料
二 添加物を含む旨の表示中「増粘」の文字を含む場合 増粘剤又は糊料

7 次長通知

食品衛生法に基づく添加物の表示等について(平成22年10月20日消食表第377号) 最終改正平成25年10月22日消食表第293号

消費者庁次長から各都道府県知事,保健所設置市長,特別区長宛

例外表示の実質的ルール

2016年10月27日

トクホ違反横行に抗議する要望書を提出 10月7日 

2016年10月7日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てにトクホ違反横行に抗議する要望書「トクホ違反横行に抗議します~保健機能食品制度の総合的抜本改善を~」を提出しました。
トクホ違反横行に抗議します ~保健機能食品制度の総合的抜本改善を~

消費者庁は日本サプリメント社のトクホ(特定保健用食品)6品目について9月23日、表示許可取消を措置しました。次いで、9月27日には、業界団体の公益財団法人日本健康・栄養食品協会を通じて、すべてのトクホ約1200品目について、成分含有量調査や販売実績、失効予定などについて調査するよう要請し、10月26日までの回答を求めました。さらに9月30日には改めて事業者による自主点検の推進を求める要請文を発表しました。

一連の同庁の対応は日本サプリメント社の表示許可取消要因となった関与成分が含有されていなかった事実や、含有していても規定値に満たないものだったこと、さらに、その事実を同社が把握してから少なくとも2年以上も消費者庁に報告しなかったこと、など、同社の極めて悪質な行為が背景にあるとされています。実際、日本サプリメント社は2014年3月にも許可表示とは異なる表示で販売していた例があり、当時の消費者庁長官が「誠に遺憾」として再発防止を指示したことを記者会見で報告したこともありました。

しかし、私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、今回の消費者庁の一連の措置は同社の悪質性以外に別の重大な事実を示したという、そのことにこそ驚愕しています。

トクホの表示許可は消費者庁などの関与のもとに実施されます。許可した消費者庁は許可時の要件が市販後も維持されていることを常に確認することが果たすべき責務であるはずです。そのことが国民・消費者からの重大な付託であるからです。ところが今回の「事件」はそのことを消費者庁においてどの職員も全く認識していなかったことを教えました。それが分かった段階で、トクホ制度の信頼性は崩壊したと言えます。消費者への重大な裏切り行為を蔓延させる無責任体制となっていたこと、この深刻な事実が提示されたのです。

今回の「事件」は、まさにこの「無責任体制のまん延」を示す象徴的出来事です。日本サプリメント社が消費者庁に報告しなかったら、さらに違反行為は継続されていたこと、許可を与えた消費者庁自身が現在の市販トクホについて何ら実態を把握していなかったこと、一義的責任がある事業者及び事業者団体に対して事が起こってからの対応を迫るのみで、許可責任者として自らが真に再発防止につながる実効性ある施策を提示できないでいること、もっとも重要なのは、このような事件発生の原因究明に消費者庁自身が取り組む気概を見せていないことです。一過性の「事件」として済まそうとするなら、もはや消費者庁の存在価値はなく、消費者にとっては必要悪でしかありません。

それは消費者委員会に対しても言えることです。消費者委員会は、トクホ表示許可にあたって意見を述べる機会を有しています。しかし、今回の「事件」に際しては、いまだに具体的対応すら見られません。静観は許されません。消費者目線から文書による意見を発信し、時計を前へ進めることこそ消費者委員会の役割であるからです。

このような消費者目線に立って消費者の痛みを胸に感じることのできる行政機関が存在しないからこそ、今回の事件は起きたと私たちは考えます。そこで、このような事態に厳重に抗議するとともに、下記項目を要望します。

なお、10月31日までに要望に対する方針など、ご回答をお願いします。

  1. 消費者庁は、今回の「事件」を時系列的に究明し、日本サプリメント社が販売した問題トクホの販売数、売上額を過去にさかのぼって総合的に明らかにし、公表すること。特に、「事件」発生の原因究明に速やかに取り組み、同社が違反に至った要因と消費者庁の監視・チェックの実態、その課題、事前に違反を把握できなかった要因を明確にすること
  1. 消費者庁は、「事件」公表後の日本サプリメント社の消費者対応を把握し、問い合わせ電話がつながらない消費者苦情がまん延していることを重視し、消費者目線からの消費者対応をとるよう同社を指導すること
  1. 消費者庁はあらゆる執行法律を勘案し、日本サプリメント社に対し、課徴金の賦課をはじめ、厳しい法的処分を下すこと
  1. 消費者庁は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会に要請した10月26日を期日とする調査結果を公開すること。あわせて、今年5月に機能性表示食品検討会で報告した機能性表示食品の事後調査の結果も早急に公開すること。いずれの公開も実施しない場合はその理由を説明すること
  1. 消費者委員会は、今回の「事件」についてトクホ許可の審査に関わる消費者委員会として、その自らの態度を、意見・提言・建議などいずれの形態にかかわらず、消費者・国民及び消費者庁に対して文書で明らかにすること
  1. 消費者委員会は、消費者庁および関連省庁のトクホ関連施策について、消費者目線から調査し、今回の「事件」がなぜ発生したのか、なぜ防止できなかったのか、その責任所在も含め、再発防止への政策提案を提示すること
  1. 消費者委員会は、平成23年6月23日付の「特定保健用食品の表示許可制度専門委員会」報告書で更新制度導入の検討を消費者庁に求めている経緯を重視し、同制度を早急に導入するよう消費者庁に働きかけること
  1. 消費者の信頼回復と適正な表示制度へ向けて、トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品など各種保健機能食品制度を総合的・一元的に捉え、それら現行制度を抜本的に改善する検討に早急に着手すること

以上

2016年10月7日

機能性表示食品制度および食品添加物、加工食品の原料原産地表示について消費者庁と意見交換

食品表示を考える市民ネットワークは、8月に3本の意見書を消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛に提出し、その回答を求めました。消費者庁は文書で回答できないとのことで、9月9日中央合同庁舎4号館で、意見書の回答を聞く会を持ちました。消費者庁からは、食品表示企画課課長、課長補佐、農林水産省からは消費・安全局消費者行政・食育課の担当室長など6人が出席しました。回答の概要は以下の通りです。

■機能性表示食品制度の事後調査について

  • 届出SR(システマティック・レビュー)の検証で不十分な内容もあったが、今後、この報告書を参考にしながら、事業者の責任においてレビューの質が高まることを期待している。
  • 機能性関与成分量の差異や品質のバラツキについて、法違反と思われるものがあったが、行政指導したかについてなど、個別の事例については答えられない。
  • 今年度の事業として、安全性についての調査も実施する。
  • 販売60日前の届出資料を消費者庁のホームページに開示する作業を加速できるように補正予算1000万円を請求中。(この予算額で資料開示の遅れを取り戻すことができるとは思えない。本気度が問われる。)
  • 法執行は、食品表示対策室が適正に対応していると聞いていると回答。

■食品添加物について (新たに指定される食品添加物の表示基準について、消費者委員会に諮問するか否かについての明確な回答はなかった。)

  • 過酸化水素については、残存すれば表示することになっているとの説明があった。

■加工食品の原料原産地について

  • 基本は、国別表示。
  • 国別表示が困難な場合の表示方法として、「可能性表示」「大括り表示」「中間加工原材料表示」を考えている。 (国別表示ができないとは考えられない、今回の北海道の台風被害のように「緊急避難措置」のみの例外的な表示方法として規定すべきなど、私たちの考え方を再度明確に伝えた。)

消費者委員会事務局から電話で、消費者委員会のホームページにも書いてある通り、個々の意見書について対応はしないとの連絡がありました。面会での意見交換もしないのかと聞いたところ、「個別の対応はしない」ということでした。

文責 佐野真理子

2016年9月20日

8月30日 加工食品の原料原産地表示に関する意見書を提出

2016年8月30日付けで、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、現在、消費者庁と農林水産省主催の検討会で議論されている「加工食品の原料原産地表示」について意見書を提出しました。

加工食品の原料原産地表示意見書

「加工食品の原料原産地表示は国別表示が原則です」

消費者庁「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」の審議は、今秋の報告書のまとめを目指し、大詰めを迎えています。しかし、最終検討段階にあたって、事業者の「実行可能性」を重視するあまり、消費者が求め、実現されるべき適正な原料原産地表示が、再び三たび、風前の灯のような状態に置かれています。
私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、加工食品の原料原産地表示は、国別表示を原則とすること、それは十分可能であること、そのためのトレーサビリティシステムなどの環境整備にも力を注ぐこと、などを提起し、正しくわかりやすい表示実現を求めてきました。
その方向性はこれまで10数年にわたり先延ばしにされてきた加工食品の原料原産地表示の実現に新たな視点から挑むことを意味し、事業者の「実行可能性」を全体で底上げし、食品輸入大国・日本の現状を踏まえた「消費者の目線」を尊重する新表示制度の導入へと結びつくものと考えています。それは実行可能性の高い施策であると、私たちは認識しています。
同検討会は、足踏みも後退もすることなく、しっかりと前へ向かって進んでいただきたい。検討の方向性があいまいにならないよう、改めて以下の点について意見を述べ、消費者を重視した加工食品の原料原産地表示の実現を求めます。

1.加工食品の原料原産地表示は、何よりも国別表示が基本であり、これが原則であり、その点を明確にすべきです。消費者が知りたいのは、実際に購入した食品の原材料がどこの国のものか、その事実です。

2.従って、「可能性表示」「大括り表示」は、基本・原則から外れた「緊急避難措置」「緊急的な例外規定」であり、これら表示方法は通常規定では認められないことをまず明確にしてください。また「中間地表示」はそもそも原料原産地表示とは異なりますので、別の表示法として位置付けるべきです。

3.現行の22食品群+4品目を規定する「2要件」を廃止し、新しい表示ルールのもとに一本化すべきです。この「2要件」による複雑・怪奇な表示の弊害については、すでに私たちの意見書等でもその実態を明らかにしています。

4.加工食品の製造・販売業者は、自ら製造・販売する食品の原材料がどこの国で生産あるいは加工・製造されたものか、きちんと把握することが、課せられた最低限の責任であることを自覚してください。本来果たすべき責任を果たしていないことを「実行可能性」の議論に持ち込むのは、事業者責任の回避であり、消費者としては許すことができません。

5.以上の点を制度的に担保するための食品トレーサビリティー制度の導入を検討することを報告書に盛り込んでください。原料採取から中間加工・製造・包装・販売などの各段階で情報が適切に伝達されていることの制度的保証が新しい表示制度の信頼の証となり、消費者が望んでいることです。

以上

2016年8月31日