2015年3月6日 「ノンアルコール飲料の特定保健用食品許可に抗議するとともに、許可の取り消しを求めます」を提出

2015年3月6日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、「ノンアルコール飲料の特定保健用食品許可に抗議するとともに、許可の取り消しを求めます」を提出しました。
ノンアルコール飲料の特定保健用食品許可に抗議・取り消しを求める抗議書

 2015年2月18日消費者庁は、消費者委員会が2014年8月5日に特定保健用食品(トクホ)として表示許可することが「不適切である」と答申したノンアルコール飲料2品目について、許可したことを発表しました。

消費者委員会が「不適切」としていたのは、ノンアルコール飲料が、未成年者のアルコール摂取を促す可能性が払拭できないことなどが理由ですが、消費者庁は、許可にあたって、ノンアルコール飲料を酒類と同等に扱う業界自主基準の運用厳格化を条件にしたとしています。ただし、当日の記者会見で同庁担当官は、この判断にあたっては消費者委員会に事前説明をしていないことを認めています。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、業界自主基準を遵守することを条件にしてまで、消費者庁がトクホを許可すること自体が問題であり、それが遵守される保証はまったくないと考えています。

そもそもノンアルコール飲料は誰でも購入できる「清涼飲料水」であり、一行政機関が未成年者に販売しない等の条件を付けるのは矛盾しています。

しかも、今回のトクホ許可には、ノンアルコール飲料そのものの問題のほかに、消費者行政に対し監視機能を発揮すべき消費者委員会と、施策遂行を担う消費者庁との不適正な関係、トクホ制度の審査・許可への不信と、制度への監視体制の不透明さ、などの問題があることも明らかになりました。

以上の観点から、私たちは、ノンアルコール飲料のトクホ許可に抗議し、その撤回を求めるとともに、次のような意見を提起します。

【記】

1.消費者委員会は、自らの検討結果に基づき提示した「答申」が事前説明もないままに覆されたことを重視し、国民から付託された監視機能を適正に発揮するために、ノンアルコールのトクホ許可を撤回するよう消費者庁や内閣総理大臣に「建議」「勧告」すべきです。

2.アルコール飲料は致酔性(飲めば酔う)・依存性のある飲料で他の飲料とは全くことなることからトクホの対象には含まれていません。ノンアルコール飲料は、アルコール飲料と清涼飲料の壁を低くし、アルコール摂取へと促す危険性が大きく、未成年者飲酒を誘因する飲料であることを消費者庁は重視すべきです。

3.これまでの消費者団体の調査では、消費者は、ノンアルコール飲料をアルコール飲料の代替品と考えている人が多いことが明らかになっており、そのような飲料を国が推奨するトクホとして許可すべきではない。

4.そもそも消費者庁は、許可するにあたって条件を付け、その条件が遵守されなければ許可を取り消すとしていますが、その条件が遵守されることを保証する監視体制も明確でない中では、極めて無責任な判断と言わざるを得ません。経済優先の規制改革に重きを置く施策を根本から見直すべきです。

5.「エコナ問題」をきっかけにトクホの許可・更新・取り消しのあり方、その課題が明らかになったものの、その後の対策が一向に進んでいません。新たに機能性表示制度の導入も予定されていますが、消費者庁及び消費者委員会は、今回の問題も踏まえ、保健機能食品(トクホ、栄養機能食品)制度、機能性表示制度等について、関係省庁とともに、抜本的な総合的再検討に早急に着手すべきです。

以上

2015年2月27日 「健康産業新聞」の「主張」と私たちの公開質問状への「返信」内容に抗議します

当団体は2015年2月27日、UBMメディア株式会社宛て、『「健康産業新聞」の「主張」と私たちの公開質問状への「返信」内容に抗議します』を送付しました。
 「健康産業新聞」の「主張」と私たちの公開質問状への「返信」内容に抗議

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、このほど、1月13日付け「健康産業新聞編集長」あて公開質問状に対して、貴社からの2月3日付け「弊社編集長あての公開質問なる文書について」(以下、返信)を受け取りました。

極めて残念なことに、その「返信」は、私たちの公開質問への回答を拒否し、その理由として「こうした質問状を消費者団体と思しき貴団体からいただく根拠も見あたらない」「当紙は知的所有権に属する有料媒体」であり、「購読者に限定的責任を持つもの」であって「断片的な質問に関して購読者以外の不特定多数に回答するものでもない」とし、食品業界のオピニオンリーダーのように振舞おうとされている報道機関としては、驚くほど閉鎖的で傲慢な態度を表明されています。

その上、貴社「返信」は、「健康産業新聞」の「主張」欄で批判したT委員(立石幸一委員)について、一方では「T個人に興味もなく」「また個人を批判するものでもなく」、だから「あえてT委員としている所以」と匿名理由の一端を説明しながら、他方では、「Tなる人物について食品表示部会で事業者の立場を標榜し、事業者の声と異なる主張を繰り返していることに疑義があり」「文書改ざんの指摘を受けるなどの経歴」があり、「国民が政策を託す委員として望ましくない」などと「主張」欄での個人批判を再び確認するなど、私たちが問題としている「主張」欄が立石幸一委員の名誉を損なう内容であったことを、今にいたっても、謙虚に見据えようともしない、矛盾に満ちた内容を含んでいます。

しかも、貴社の「返信」は、5年前に発足した消費者庁および消費者委員会においてなぜ食品表示の課題を検討することになったのか、その経緯や、その検討の社会的要請について注意をはらうこともなく、「事業者の立場」や「事業者利益」が「消費者の利益」「消費者の権利」とどう関連してくるのか、といった貴社の「主張」欄に対する私たちの疑問・質問には一切答えようとせず、ただ「購読者以外には答えない」と一方的に回答を拒否されています。まさに報道機関にあるまじき「返信」内容と言わざるを得ません。

私たちは、貴社発行の健康産業新聞の「主張」欄が立石幸一委員の名誉を損なうだけではなく、消費者委員会や消費者庁、及びそれら機関に設置された検討会等の役割に関する貴社の認識において「おかしい」と思われる点を記載内容に即して指摘し、貴社の判断の根拠とその対応について質問しました。

しかし、貴社はその肝心な点について「返信」において回答を避けることを表明し、あろうことか、私たちの公開質問状に対し、当ネットワークが本当に作成・提出したものなのか、公開質問状は立石幸一委員が記載したものではないのか、T委員と立石委員は同一人物なのか、同委員は、当ネットワークの役員ではないのか、同委員は消費者団体に所属しているのではないのか、など、全く的外れの憶測のもと、「返信」での記載のほとんどを、その真偽の確認を求めることに費やしています。

このような貴社の質問について私たちは、公開質問状の提出とその質問項目に対し、それを素直に受け止められない貴社が、真実から目をそらしたい一心での願望が現れたものと思っていますが、いずれにせよ、真面目な報道機関としての姿勢は微塵もなく、言語道断と言わざるを得ません。

貴社からの質問に対しては、私たちは次のように事実を回答するのみです。

1.1月13日付け公開質問状は、私たち食品表示市民ネットワーク(代表・神山美智子)で検討・作成・確認して貴社に提出したものである。

2.立石幸一委員は、生産者・事業者委員として消費者委員会食品表示部会の委員をしていることから、私たちが主催した「メディア懇談会」に審議の経緯の説明を求める講演をお願いした経緯があるが、当ネットワークの役職員でも役員でもない。この「メディア懇談会」の模様はいくつかのメディアでも報道されている。

3.貴社は、公開質問状は立石委員が執筆したものではないか、などと当ネットワークに問うているが、それは全くの悪意に満ちた邪推であり、それ自体が、立石幸一委員の名誉を傷つけるものである。

それにしても、貴社は「事業者の立場」であれば「その発言はこうあるべきである」とあらかじめ狭く断定され過ぎているように思えます。却って目の前のダイナミックな事実の推移が見えない、あるいは見ようともしないで自らを縛っていると考えざるを得ません。貴社の想定する「事業者の立場」を貴社自身が明確にしていないために、そのステレオタイプの情報分析手法は私たちの憶測でしかありませんが、それが貴社の取材・報道活動にどんな影響を及ぼしてくるのか、的外れな私たちへの質問と、問われているのは貴社であるのにそれを受け止めることのできない貴社の、真摯さが欠如した今回の対応姿勢を見るとき、その点が懸念されます。

消費者行政の推進が求められる中にあって、健康産業新聞の「主張」欄と今回の返信内容は、食品表示情勢についての貴社の認識の一端を表象したものと考えます。それ故に、私たちが公開質問状で示した事実への真摯な把握、問われたときに必要な、根拠についての納得できる説明は、「言論」を担う報道機関の重大な責務であるとともに、「業界紙」であれば、業界健全化への一里塚とも考えます。それを貴社が回避していることは、食品業界全体への消費者の信頼感を失うことにもつながりかねません。

私たちは、そのような責務・役割を放棄している貴社の「主張」欄と今回の返信内容に、厳重に抗議します。

以上

2015年2月3日 健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄への公開質問に対する回答が届きました

当団体は2015年1月13日、UMBメディア株式会社「健康産業新聞」編集長様宛てに「健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄への公開質問を行ないました。その公開質問に対して、UMBメディア株式会社様より、2015年2月3日付文書『「弊社編集長あての公開質問」なる文書について』が届きましたので、公開いたします。なお、全文掲載の了承を得ております。
「弊社編集長あての公開質問」なる文書について UBMメディア株式会社

2015年1月13日 健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄への公開質問

2015年1月13日、UMBメディア株式会社「健康産業新聞」編集長様宛てに昨年11月5日号「主張」欄への公開質問を行ないました。

【本文】

昨年11月5日号「主張」欄への公開質問

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は今年1月になって、貴紙「健康産業新聞」が、2014年11月5日号「主張」欄で、「(消費者委員会の食品)表示部会は、文書捏造の疑惑の委員にいつまで施策決定の議論をさせるのか・・・」という題のコラムを掲載していることを関係者からの情報提供で知りました。内容は個人攻撃を主体とした傲慢な姿勢に満ちたもので、取材不足と深刻な表示問題への極めて浅い認識で書かれたものと考えます(概要を別掲)。

私たちは、これまで食品関連の「いわゆる業界紙」にあっても、ジャーナリズム活動にかわりはなく、真実追求と真実報道を目的とした「言論の自由」を担う責任機関であると位置付け、どのような報道機関であっても取材に応じてきました。事実に基づく真実追求こそが、業界の適正化につながり、社会的信頼を醸成する道筋であり、その責任を「いわゆる業界紙」も担っていると考えてきたからです。

ところが、貴紙の「健康産業新聞」の「主張」欄は、主張の前提となる事実について、当時者への取材もないままに、食品表示問題への浅い認識と表現力の欠如もあって、かえって真実から遠ざかり、何よりも貴紙が俎上(そじょう)にあげているT委員(立石幸一委員)の社会的信頼性を失墜させ、結果として、食品業界全体の信頼感を喪失させる内容となっています。

報道機関は、「正しい情報提供」と「言論活動」という両面の内実が常に問われる社会的責任を担っています。言論活動の弱さを「情報提供」で補うことはできません。今回の「主張」欄は、はからずも、貴紙のコラム欄に示された「言論」がいかに思慮浅いものか、業界専門紙でありながら、前提となる事実の分析力がいかに危ういものであるかを物語っています。それだけにT委員(立石幸一委員)の名誉を一方的に損なう結果となり、人権を無視する内容となっています。「主張」欄を読む限り、貴紙は、食品業界のオピニオンリーダーであるかのように自らを位置づけられていますが、このような「主張」内容では、ますます、健康食品業界の社会的信頼感は失われていきます。

私たち「食品表示問題を考える市民ネットワーク」は、貴紙の2014年11月5日号「主張」欄に対し、以下の点について公開質問します。なお、ご回答は1月31日までにお願いします。ご回答については、当「ネットワーク」ホームページにて公開することをあらかじめ申し添えます。

【質問事項】

1.「事業者(代表)を自称するT委員」とは立石幸一委員のことであることは公開審議の出発点から公のことですが、「主張」欄ではなぜ、「T委員」と匿名にしているのですか。公開での発言であり、氏名も公開され、しかもそれが容易に特定できるのに、敢えて匿名にした理由は何ですか。また、個人批判を中心とする主張でありながら執筆者名を記載していないのはなぜですか。

2.T委員の「不規則発言」という言葉が何カ所かに登場しますが、どの発言が「不規則」なのですか。また、それを「不規則」と判断された理由は何ですか。

3.「事業者の多くが存続を求める固有記号」との記載がありますが、そう主張される根拠は何ですか。

4.T委員のことを、「事業者の立場だとしながら(固有記号)廃止論の急先鋒に立ち、事業者の主張とは真逆の廃止論を振りかざししている」と記載されていますが、T委員の主張のどこがどのように問題なのですか。

5.「事業者の意向とは異なる政策が進みつつある現実」とはどのような「現実」のことを指しているのですか。

6.T委員を「引きずりおろせ、誰が推薦したんだ、との声もあがり」「消費者庁の政策決定への疑問も出始めた」との記載がありますが、「引きずりおろせ」との「声」は誰が誰に対して「あげた」ものですか。また、消費者委員会検討会の一委員に過ぎないT委員の発言が別機関である「消費者庁の政策決定への疑問も出始めた」という記載へとつながる根拠は何ですか。このような行政への「圧力」があったかのように示唆される記述の根拠を明らかにして下さい。

7.トランス脂肪酸に関する検討については、「文書捏造の疑惑」と記載しつつも、「この人物が提出した捏造文書」「文書捏造などの奇行が指弾されている人物」と断定的な記述も見られます。貴紙は、T委員の文書に関する食品安全委員会の対応に対し、消費者団体などが食品安全委員会に抗議書を提出したことをご存知ですか。その内容についてどう思われますか。T委員について「文書捏造などの奇行が指弾されている人物」と一方的・断定的に記載したことで、T委員の名誉を著しく損なう内容となっていますが、この点についてどう認識されていますか。

8.「主張」欄は、「問題の人物の即時の更迭」を求め、そうなっていない状況を「表示部会の品格を傷つける事態」と記載していますが、「部会の品格」とは具体的に何をさしていますか。

9.「そもそも、事業者がほとんど知らないこの人物」とT委員のことを記載していますが、この知らない「事業者」とはどのような事業者のことを指しているのですか。

10.「事業者側が固有記号廃止を受け入れなければならなくなると、もはや部会は無用の長物と言わざるを得ない」と記載されていますが、仮に部会が、製造所固有記号を原則廃止へと明確化することを結論づけたなら、なぜ、そのような結論を出す部会が「無用の長物」となるのですか。

11.そもそも、健康産業新聞の「主張」欄は、「事業者の利益」と「消費者の利益」、その関係をどうお考えなのですか。

私たち、「食品表示を考える市民ネットワーク」では、今回判明した健康産業新聞の「主張」欄は、部分的な事実のつまみ食いと、報道機関が避けるべきひとり相撲の思いこみ、及び、多面的な取材活動の回避や深い洞察過程からの意図的な逃避など、ペンを持つものが本来はしてはならない表層的な行為に基づいて作成されたものと思わざるを得ません。同欄で個人批判の対象にされたT委員への取材もせずに、「捏造」「奇行」「問題人物」「引きずりおろせ」「奇っ怪なのは更迭させないこと」など、一方的にその名誉を損なう記述で埋めていることは重大な問題と考えます。個人が特定される匿名などはそもそも匿名の名には値しません。それは執筆者や新聞社の責任回避という無責任さを示す行為です。上記質問事項について、1月31日までの回答を求めます。

以上

 

【参考】

健康産業新聞2014年11月5日号「主張」欄 同欄には次のように記載されています。

■事業者(代表)を自称するT委員が、消費者委員会の表示部会で不規則発言を繰り返している

■事業者の多くが存続を求める固有記号についても、事業者の立場だとしながら廃止論の急先鋒に立ち、事業者の主張とは真逆の廃止論を振りかざしている

■この人物がどのような経緯で委員となったのかも不可解

■4月のトランス脂肪酸の議論では遂に文書捏造の疑惑が飛び出してきた

■その時点で「更迭」は不可避とみられていたが、表示部会は何の処分も行わず議論を続行している

■問題の人物だが、例えば、会議時間の多くを意味不明の自己主張で占有したり「消費者庁を事業者庁に変えろ」などの不規則発言を繰り返し、固有記号問題でも事業者(代表)と称しながら、事業者の声とは真逆の廃止論を展開してきた

■このような不規則な表示部会で、事業者の意向とは異なる政策が進みつつある現実を事業者は知らない

■話が伝わるにつれ「引きずりおろせ」「誰が推薦したんだ」などの声も上がり、消費者庁の政策決定への疑問も出始めている

■トランス脂肪酸に関する表示部会で、この人物が提出した捏造文書が問題となった

■奇っ怪なのは、この時点で表示部会はこの人物を更迭せず、未だに固有記号などの政策議論に参加させていることだ

■食品表示問題は産業界にも重要で、消費者行政全般に関わる問題。部会の品格を傷つける事態を消費者委員会の出来事と看過してよいのだろうか

■事業者がほとんど知らないこの人物が、事業者の主張と相入れない議論を展開し、その結果、事業者側は固有記号廃止を受け入れなければならなくなると、もはや部会は無用の長物と言わざるを得ない

■ましてや文書捏造などの奇行が指弾されている人物を政策決定の委員として許容し、政策議論を進めるとなると、表示部会や消費者委員会のコンプライアンスは一体どうなるのか

■問題の人物の即時の更迭と併せて、このような問題委員が事業者代表として選出された経緯や、推薦者の推薦責任も明らかにし、同じ誤りを繰り返さない仕組み作りと迅速な議論の正常化を求めたい

 

2014年11月7日 食品表示基準案「答申書」へ反対の意思を表明するとともに消費者委員会に抗議する文書を提出

消費者委員会に厳重に抗議するとともに食品表示基準の「答申」内容に強く反対します。

2014年11月7日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、消費者員会の食品表示基準案に関する「答申書」への反対の意思を表明するとともに、消費者委員会に抗議する文書を提出しました。

食品表示基準「答申」への反対意見および消費者委員会への抗議文

消費者委員会は、同委員会「食品表示部会」が10月31日に食品表示基準案に関する「答申書案」を同委員会に提出したことを受け、同日、内閣総理大臣にその内容を踏まえた「答申書」を提出しました。この答申書は、消費者から批判の強い消費者庁提案の食品表示基準案をそのまま認めるものであり、事業者の利益のみを最大限重視した内容です。答申書案を検討した同委員会食品表示部会の検討経緯にも疑問がもたれています。同部会は、10月15日には消費者庁案に「反対し修正を求める」内容だった答申書案を、わずか2週間後の31日には、消費者庁案にことごとく「賛成する」内容へと180度転換させる結論を出しました。答申にいたる検討経過、及び内容については、不透明極まりない重大な疑義がもたれる前代未聞の答申となっています。

一つの例として、消費者委員会「食品表示部会」は、部会全体のコンセンサスを得るための丁寧な検討を放棄し、項目ごとに「多数決」を採用するなど、およそ「消費者の権利の尊重」に軸足を置くはずの食品表示に関する検討には馴染まない方式を採用しました。一般に、施策決定に多数決を導入するには、委員会構成の公平性について、及び一人ひとりの委員について、国民・消費者の納得と信頼・確認を前提としますが、その検証もなされないままに、安易な審議方式が採用されました。部会委員の選任方法をはじめ、部会での少数派の意見をどう尊重するかという民主主義の基本すら考慮しない、独善的な審議方法がとられたのです。この点も前代未聞です。

答申にはパブリックコメントで寄せられた多くの消費者の意見が反映されていません。むしろ、安全の権利、知らされる権利、選択する権利など、「消費者の権利」を侵害する内容ばかりとなっています。「権利」と「利益」の混同が見られます。

本来、消費者行政を消費者目線から監視する機能をもつ消費者委員会にあっては、事業者の利益のみを重視した消費者庁案に対しては、消費者の権利を守る立場からの「建議」の提起によって、その姿勢をただすのが国民・消費者の期待にかなう消費者委員会のあり方のはずです。

にもかかわらず消費者委員会は、その重大な役割を認識せず、消費者庁の施策提案に反対すらできず、消費者の期待に応え得る姿勢を貫くこともせず、消費者の望まない食品表示基準案に賛同するという極めて大きな過ちを犯しました。このような消費者委員会にあっては、今やその存在意義すら厳しく問われているものと思わざるを得ません。

今回の答申書案は、国民・消費者から付託された消費者委員会の権限を自ら放棄するものであり、消費者の権利の尊重へ向け「独立して職権を行う」と設置法で保証された消費者委員会委員の、その法的権限すら放棄するものです。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」は、以下のように、今回の答申書に反対を表明するとともに、消費者委員会に対し、厳重に抗議します。

【記】

1. 実施経過措置「5年」への延長は撤回すべきです 

消費者委員会「食品表示部会」が10月15日に提示した最初の答申書案の付記では、表示実施の経過措置期間について消費者庁が示すような「5年という比較的長い経過措置期間を設ける必然性を確認できない」とし、「消費者庁案は不適当」とする判断を示していました。ところが、2週間後の10月31日の答申書案は、消費者庁からの様々な「出来ない理由」をすべて受け入れ、5年延長などを認める見解を示し、消費者委員会もそれを了承するに至りました。食品表示一元化の検討期間を含めると、実施までに10年以上をかけることになります。「5年延長」の方針はすみやかに撤回すべきです。

2.製造所固有記号は廃止し、製造所名や所在地を記載するという原則に戻すべきです同制度は廃止し、製造所所在地及び製造者の氏名を表示する本来の原則へと戻すべきです。

答申は、同一商品を2つ以上の工場で製造する場合に製造所固有記号の使用を認め、業務用食品をその対象外とする消費者庁案を了承しました。しかし、消費者からのパブリックコメントをはじめ、部会委員の中にも、この措置について反対の意見が散見していました。製造所固有記号は、現在、事業者の利便性を図るためだけの制度であることが、私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」の調査でも判明しています。

3.栄養成分の義務化に関する「小規模対象事業者」を消費税法規定に限定すべきです 

答申は、表示を省略できる小規模事業者の考え方について、「当分の間、中小企業法にもとづく小規模企業者を対象にする」との消費者庁案を了承しました。しかし、すべての加工食品の義務化を前提とすることを踏まえるなら、期間があいまいで、要件に抜け穴の可能性が指摘され、消費者に混乱をきたす消費者庁案は採用すべきではありません。これも事業者の利益のみを考慮し、消費者の権利をまったく尊重していない措置であり、当初の予定の通りに消費税法規定の小規模事業者に限定するとともに、すべての事業者が表示するよう早急に対策を講ずるべきです。

4.栄養強調表示(減塩) 

答申は、ナトリウム量の低減された旨の表示について、25%ルールからしょう油と味噌を除外する消費者庁案を了承しました。このような特例を認めることは、表示についての消費者の混乱を招くことにつながり、特例を認めない基準を示すことこそ、一元化の目的にかなうものです。特例措置は撤回すべきです。

5.任意ナトリウム表示は食塩相当量を前にもってくるべきです 

答申は、栄養成分表示に関するナトリウムの表示に関して、食塩相当量の記載を原則とし、「ただし、ナトリウム塩を添加していない食品に限り、任意でナトリウムの含有量を表示することができるとし、その場合の表示は、ナトリウムの量の次に食塩相当量を括弧書き等で表記する」という消費者庁案を了承しています。消費者が知りたいのは「食塩相当量」であることを考えるなら、任意であっても食塩相当量を統一的に先に記載すべきです。

6.検討に際しての多数決方式採用についてその理由と経緯を明確に説明すべきです

今回の消費者委員会の答申にいたる過程の中で、最も不透明なのは、食品表示部会の検討で、突然、多数決が採用されたことです。また10月15日と31日の検討では、答申書案の結論が180度転換され、全く逆のものとなったことも極めて不透明です。

内閣総理大臣(消費者庁)からの諮問項目について「10月24日時点での各委員意見」が10月31日の部会資料として公表されていますが、ここには、諮問項目に「不賛成」を表明している委員が項目ごとに「3人」から「6人」の範囲で存在しています。最も多い「不賛成」は「製造所固有記号」に関する「6人」で、「経過措置の延長」についても「5人」の「不賛成」が記載されています。しかも、記載されているのは「不賛成」のみであり、消費者庁案に「賛成する」との意見数は記載されていません。

部会の構成を見ると、部会長と部会長代理は消費者委員会委員が兼ねています。この方々がそもそも採決の対象に入るのか議論あるところです。それらの人々を除外すると、委員数は14人となります。14人の中で、「不賛成」を「6人」もの委員が表明するのはどんな事態でしょうか。それを押し切っての「答申」にどんな信頼あるいは信ぴょう性があるというのでしょうか。

また、これまでの議事録を見ても、自らの意見を公の場でまったく表明していない委員がいたり、消費者代表と言われながら、事業者委員から「消費者代表とは考えられない意見」と批判されたりした委員も存在します。委員構成、及び、委員人選、その責任を考慮しない中での、意図的な審議運営だったと思わざるを得ません。

多数決は、およそ「消費者の権利の尊重」を前提とした食品表示に関する検討には馴染まない方式です。事業者の「利益」が消費者の「権利」と比較されることはできません。にもかかわらず、消費者委員会は、消費者と事業者の意見のバランスを考えて検討しているという消費者庁の説明そのままに、「消費者と事業者の利益を調整する」という旧来の「霞が関行政」の悪弊をそのまま受け入れています。

前述したように、部会委員の選任方法をはじめ、部会での少数派の意見をどう尊重するかという民主主義の基本すら考慮しない運営がなされたこと、これは、組織を独善的なものへと導くものです。

この点を踏まえた上で、消費者委員会は、今回の答申について、その過程で、多数決方式を採用したのはなぜか、その理由と経緯を明確に国民・消費者に明らかにするとともに、今一度、「消費者の権利の尊重」と「委員は独立して職権を行う」ことを明記した消費者委員会設置法の精神を遵守することを訴えます。

そして、何よりも、消費者委員会の委員は、同委員会の存在意義が厳しく問われる事態になっていることを真摯に、危機感をもって認識し、消費者の期待に応えられ得る消費者委員会へと適正化を図っていくことを求めます。

以上

 

 

2014年10月10日 消費者庁が提示したパブコメ後の食品表示基準変更案へ意見書を提出

役割果たさない消費者行政、消費者目線しっかり持って ~逆戻りの「事業者優先」、消費者の権利を尊重し新食品表示基準見直しを~

2014年10月10日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、消費者庁が提示したパブコメ後の食品表示基準変更案へ意見書を提出しました。

食品表示基準変更案への意見書

消費者庁は9月24日、新しい食品表示基準案を消費者委員会食品表示部会の会合で公表しました。パブリックコメントの結果を踏まえたとされながら、その内容は当初案以上に、大幅な緩和措置が盛り込まれています。食品事業者の意向を重視し、その要望のみを受け入れたものと思わざるを得ません。中にはこれまで検討もされてこなかった事業者向け例外措置も含まれており、事業者寄り基準案となっていることが最大の特徴です。

また、パブリックコメントが実施され、その結果を集計中の「機能性表示制度」に関する食品表示基準案も事業者優先の措置が随所に散見し、「消費者目線」が反映されていません。消費者被害をかえって増長させるものと判断せざるを得ません。

私たち「食品表示を考える市民ネットワーク」では、食品表示法で明記された理念に沿って、安全の確保や知らされる権利、合理的選択のできる権利など、「消費者の権利」を尊重する表示基準となるよう、たびたび消費者庁及び消費者委員会に要望してきました。

しかし今回提示されたこれらの食品表示基準案は、消費者が指摘してきた当初の不十分な「案」以上に後退したものであり、消費者の権利をないがしろにするものです。

以下、「全般的要望」及び「個別的要望」について、その理由と、改善項目を提起します。

【全般的要望と改善措置要求】

  1. 表示基準案について パブリックコメントの集計・分析結果の概要が公表されたが、消費者庁が採用した事業者の意見の中には、栄養成分表示の義務化対象から除外される事業者の範囲についての実態把握など、消費者庁自らその事実確認をしていない項目があることが明らかになりました。不明確な事業者の意見のみを施策に反映させ、消費者側からの意見をほとんど採用していない理由について、消費者庁はきちんとした説明責任を果たすことを求めます。
  2. 新表示基準実施までの猶予期間が「加工食品2年」「添加物1年」となっていた当初の基準案が「5年」へと突然延長され、「生鮮品」も「法施行と同時」だったものが「1年半」へと延長されています。この表示実施の猶予期間延長は事業者からの要望と思われますが、消費者庁が「5年」とする判断に突然踏み切った理由と経緯について、消費者・国民に明確な納得ある説明を求めます。
  3.  消費者行政を監視する機能を持つ消費者委員会は、「報告書」で提示した自らの意見と「消費者庁案」として提示された基準案変更内容について、その違いを深刻に受け止めるとともに、「諮問―答申」の形ではなく、消費者庁案に対する消費者委員会としての自らの意見を文書にて早急に表明すること。消費者委員会に国民から付託された第三者機関としての主体性をもち、独自の監視機能の責任をきちんと果たすことを求めます。
  4.  消費者庁は機能性表示制度について消費者被害防止の観点から、より「消費者目線」に立った制度設計を再検討すること。 

 【個別的要望と改善措置要求】

  1. 「加工食品」「添加物」「生鮮食品」の経過措置期間をそれぞれ「2年」「1年」「施行同時」から「5年」「1年半」へと延長する措置は、消費者の権利を軽視する措置であることから、撤回を求めます。
  2.  製造所固有記号を廃止し、製造所及びその所在地を明記するという本来の原則に戻すことを求めます。
  3.  業務用食品について、製造所及びその所在地を消費者に知らせる対象から「除く」とする変更措置については、業務用・消費者用の区別がなくなりつつあることや、その区別を行政が把握できていない現状にあっては、この措置の撤回を求めます。
  4.  ナトリウムの表示について、義務表示としてのナトリウムの量については、「食塩相当量」で表示するとなっており、当初のパブコメ案では、「食塩相当量の次にナトリウムの量を括弧書き等で併記する」となっていたのを、任意に「ナトリウム」の量を表示する場合、「ナトリウムの量の次に(食塩相当量)を記載すること」とする変更案が示されました。この消費者庁の変更案は、食塩摂取の低減などを求める消費者の意向に反するものであり、かえってわかりにくい表示となるため、この変更案の撤回を求めます。
  5.  栄養成分表示の義務化についての小規模事業者の考え方について、パブコメ案では「消費税法九条に規定する小規模事業者(課税売上高が1,000万円以下の事業者)」としていたのを、「当分の間、中小企業基本法で規定する小規模企業者(常時の従業員数20人以下、農業・サービス業に属する事業を主たる事業として営む事業者については5人以下)などについて栄養成分表示の省略を認める」と変更案が提示されました。当初案である前者の方が行政も把握・監視できるという点で、より現実的・妥当です。しかも、提示された「当面」の措置としての中小企業法での「小規模企業者」では、比較的規模の大きな事業者に対しても対象外となる可能性があります。従って、この変更措置の撤回を求めます。
  6.  栄養強調表示に係るルールの見直し、低減強調表示については、一律に「25%以上の相対差が必要」とのパブリックコメント案に対し、消費者庁は「ナトリウムについては、食品の製造工程上、25%以上その量を低減することが困難な食品については、相対差について特例を認める」との変更案を示しました。これは特定の事業者の意向を踏まえたものであり、「特例を認める」ことは大きな後退と言わざるを得ません。変更案の撤回を求めます。
  7.  変更案の対象外となっているトランス脂肪酸については、リスク回避を求める「消費者の権利」を踏まえ、栄養成分の義務表示に含めることを求めます。

このように、食品表示基準案は、重大な問題を含んでいます。早急な対応を図るとともに、食品表示基準策定で後回しにされている「加工食品の原料原産地表示」「食品添加物の表示」「遺伝子組み換え食品表示」に関しても、早急な全面見直し検討に着手することを求めます。                              以上の意見に対して、文書による回答を10月20日までに下記連絡先まで送付願います。

以上

2014年9月12日 食品の栄養成分表示にトランス脂肪酸含有量の表示を求めて意見・質問書を提出

日本は表示後進国・日本の消費者は無権利状態に置かれています。トランス脂肪酸等、諸外国並みの表示の実施を求めます。

2014年9月12日、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、食品の栄養成分表示にトランス脂肪酸含有量の表示を求める意見・質問書を提出しました。

栄養成分表示にトランス脂肪酸含有量の表示を求める意見書

新聞報道等によると、香港で販売されているロッテ社の「コアラのマーチ(ストロベリー)」には、トランス脂肪酸の含有量が表示されており、その値は100グラム中、4.8グラムとのことです。これは一箱当たり2.4グラムになり、WHO(世界保健機関)が一日の摂取目標値とする2グラム以内を超えています。

また、飛行機内で提供されるフランス産ハーゲンダッツアイスクリームには、トランス脂肪酸が一箱中0.4グラム含有されていることが表示されています。これら商品は日本でも同様の名称で販売されているものばかりですが、日本ではトランス脂肪酸の含有量表示はありません。

しかも、香港で販売されている「コアラのマーチ」には、キャラメル色素が食品添加物として添加されていますが、同添加物はキャラメル色素の中でも発ガン性が指摘され、国際的にも問題となっている「4ーメチルイミダゾール」(4‐MI)を含むカラメル(Ⅳ)であることが表示からわかります。しかし、日本では、キャラメル色素の表示はありますが、それが「4‐MI」であることはわかりません。この合成色素は、2012年に清涼飲料への添加をめぐり、アメリカの消費者団体が問題視し、日本でも消費者団体が、消費者庁及び消費者委員会等に迅速な対応を求めたものです。

表示によって含有成分がわかるのは、日本に比べ諸外国の方が食品表示制度の整備が進んでいるからです。このことは、日本の消費者は諸外国の消費者に比べ、合理的選択ができない「無権利状態」に置かれていることを示しています。トランス脂肪酸やリスクの高い添加物が含まれていても、日本の消費者はそれを避けることができません。これは単に「消費者の権利」が無視されていることを意味するだけではありません。できるだけ避けるべき成分として行政自ら懸念するトランス脂肪酸について、その後行政が何ら対応しない、いわば”怠慢行政”が続いていることも示しているのです。

これら問題は、今回の食品表示基準案策定で検討が回避されてきたものばかりです。このような消費者の無権利状態を早急に改善する必要があります。そこで私たちは、次の点について質問するとともに、関係機関が迅速な対応に着手し、早急に諸外国並みに表示を整備されることを要求します。9月24日までにご回答をお願いします。

【記】

1.食品安全委員会はトランス脂肪酸の「健康影響評価結果」の中で今後の課題として「脂質に偏った食事をしている個人においては摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがある」「トランス脂肪酸はできるだけ摂取を少なくすることが望まれる」などと指摘し、「今後も留意が必要」と提案しています。これら留意事項の具体的施策実施についてリスク管理機関に2年前に要請したものですが、同要請に対し、消費者庁及び消費者委員会は、現在、具体的にどのような対応をとられていますか。

2.香港で販売されている人気のお菓子「コアラのマーチ(ストロベリー)」には、100グラム当たり4.8グラムのトランス脂肪酸が含有されていることが表示されています。この含有量は一箱約50グラム食べるとWHOの一日の摂取目標値である2グラム以内を超えてしまう量です。日本でも同じ名称の商品が「コアラのマーチ(いちご)」として販売されていますが、事業者は消費者からの問い合わせに対し含有量を回答しません。消費者への積極的情報提供を消費者庁は指導していますが、その指導が軽視されている現状をどうお考えですか。

3.香港で販売される「コアラのマーチ(ストロベリー)」には、記載表示から発ガン性が問題になっているキャラメル色素の一つ「4‐MI(4‐メチルイミダゾール)」が添加されていることがわかります。しかし、日本の表示では判明しません。私たちはそのようなリスクの高い添加物の摂取を避けたいと考えていますが、表示が不備なために合理的選択ができません。この状態をどうお考えですか。どう改善させるのですか。

4.また、このキャラメル色素問題に対してはすでに2012年8月に消費者委員会や消費者庁に対し、速やかな対応を求める「意見書」が消費者団体から提起されていますが、消費者庁及び消費者委員会はどんな対応をしてきましたか。また今後、どのように対応する予定ですか。

5.香港はじめ米国商品には、トランス脂肪酸の含有量表示が義務付けられています。当然、錠剤・カプセル型ダイエタリー食品にも表示されています。しかし、日本で機能性表示制度の対象品には、トランス脂肪酸の表示義務について検討はなされていません。健康志向を背景に販売されるこれら「いわゆる健康食品」について、トランス脂肪酸の含有量表示を義務付けることは当然の対応と思われます。今後、調査を実施することはありますか。表示に関する今後の調査についてはどうお考えですか。

以上

 

 

2014年8月22日 消費者庁「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」への意見書を提出

消費者保護へ向け、健康被害情報の「報告義務・公表制度」の構築と監視・法執行体制の強化を~企業まかせの機能性表示 消費者被害の深刻化は明らかです~
「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」への意見書

食品表示を考える市民ネットワークは8月22日、この報告書の内容の問題点を示すとともに意見を消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに提出しました。

消費者庁の「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」は7月18日、第8回検討会を開き、消費者庁が提示した「報告書案」を概ね了承しました。それに基づき7月30日、同庁は検討会の意見を踏まえた「報告書」をまとめ、今後、食品表示基準案を策定、秋頃にはパブリックコメントを実施し、来年3月までに制度を導入する予定であることを発表しました。

検討会の「報告書案」は、「消費者・生活者の視点に立ち」「国民全体の利益を考える観点から検討」したとしながらも、その内容は消費者よりも食品事業者の利益優先を目指したものであり、高価で必要性に乏しい「いわゆる健康食品」による消費者被害を助長させ、「安全の権利」「知らされる権利」「選択する権利」「救済される権利」などの「消費者の権利」を尊重・担保する内容とはなっていません。同庁がまとめた「報告書」もその点への配慮は見られません。

「報告書」の各提案項目には、実効性の面で疑問の多い箇所があまりに散見されます。検討の参考にされた米国ダイエタリー・サプリメント制度は消費者保護を前提にした米国独自の法制度のもと運用されていますが、事業者の遵守規程の違反まん延により、その見直し・強化が志向されている最中にあります。「成長戦略」を優先し、米国の制度も十分に教訓化しない日本の機能性表示制度が、米国以上の制度的不備を招く可能性は否定できない、と思わざるを得ません。

もともと私たちは、「栄養機能食品」「特定保健用食品」といった「保健機能食品制度」及び「いわゆる健康食品」が並存する中にあって、新たに機能性表示制度を追加・併存して導入する措置は、食品表示のいっそうの混乱を招き、消費者被害を増長させることにつながりかねないとして、一貫して反対を表明して参りました。

今回提示された「報告書」は消費者被害増加への懸念を払拭するどころか、国の関与が不透明・不十分なために、表示制度の信頼性を担保すべき措置がなく、消費者被害をますます増長させる道を開くものと考えられます。

 

2014年7月19日 消費者委員会下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせに対して抗議文を提出

食品表示を考える市民ネットワークは、消費者問題担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、抗議文『不可解な会議運用に関する申し合わせに抗議します~自由闊達に意見を表明できる環境整備を~』(7月19日付)を提出しました。

【抗議文】

私たち食品表示を考える市民ネットワークは、消費者委員会が7月8日、第165回委員会本会議の場で、実質的に自由闊達な意見表明を封殺するような不可解な「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」を了承したことについて抗議します。

これは、消費者委員会が期待される役割を果たし、機能を発揮していくために下部組織の活用が欠かせないことから、その円滑な運用のあり方について共通認識を整理する必要性からまとめられたものとされます。しかし、「運用の在り方に関する申し合わせ」とはいえ、「本申し合わせは各種会議の運営規定の解釈指針として活用されるものとする」とも記載されており、今後の審議運営の「指針」として大きな影響を与えるものと位置付けられます。

この「申し合わせ」の策定理由の説明は極めて抽象的ながら、明らかに同委員会食品表示部会「栄養表示調査会」の審議過程での「熱き議論」の過程を前提にしていると思わざるを得ません。同「申し合わせ」内容には驚くべきことが記載されており、今後の消費者委員会の活動に、自ら重大な制約を課す箇所が少なからず散見します。私たちはこのような「申し合わせ」内容の危険性を消費者委員会の誰一人として指摘することなく、公開の場では反対の意見すら表明されずに、原案が了承されたことを目の当たりにして、極めて危うい事態に消費者委員会が陥っていると懸念せざるを得ません。

消費者委員会及びその下部組織の審議は公開で行われ、委員等は自らの信念に基づき、自らの責任において、公の場で意見を表明するのが消費者・国民の負託に応える委員等のまっとうな姿勢と考えます。しかし、今回の「申し合わせ」には、そのような自由闊達な意見を封殺する仕組みが敢えて導入されており、消費者の実情、消費生活の感覚にもっとも近くにいるべき消費者委員会及びその下部組織について、いっそう硬直化した審議運営へと増強させるものであり、墓穴を掘る行為と思わざるを得ません。この「申し合わせ」が今後の審議運営の「指針」として定着するなら、現在でさえ、審議の場でひとことも意見を表明しない委員等がいる中で、ますます、自由闊達さが削がれ、結局は、行政が提示する既定方針に沿って何も言わないことが最善策とする風潮を生み出しかねません。

私たちは、以下の理由から、今回の「申し合わせ」内容に抗議するとともに、自由闊達な意見表明を保証する環境整備の構築へと消費者委員会の検討姿勢を転換させることを強く求めます。

【記】

1.「申し合わせ」内容で最も大きな問題は「議長」の権限を不必要に強化する一方で、各界の代表として公の場での意見表明を役割とする会議の構成員に対し、礼儀を尽くさない「指針」となっている点です。以下の記述は見直しが必要です。

■発言者が制限時間を超えて発言し又は不穏当な言動があったときは、議長はその者の発言を制止し又は退去させることができる。⇒「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」2議長の権限等(4)

■議長は、会議の進行秩序を維持するために必要があると認めるときは、その秩序を乱し、又は不穏な言動をする者を退去させることができる。⇒2. 議長の権限等(5)

この部分はどんな根拠で策定されたのか不可解と思わざるを得ません。仮に、消費者委員会食品表示部会「栄養表示調査会」での「熱き議論」の経緯を想定されているのなら、この「申し合わせ」の内容は、前提とすべき事実について間違った認識のもとに策定されています。栄養表示調査会での審議経過は、議事録を見ても、新聞報道を見ても、国会での森まさこ大臣の答弁を見ても、調査会運営を担った当時の座長(議長)の議事運営の采配にこそ、問題があったものと考えられます。「不穏当な言動」「秩序を乱す」「退去させる」などの記載は、まさに本末転倒であり、不穏当です。

 

2.資料提出による意見表明について時間規制を設けている点は実効性がなく、提出できるかどうかの判断を議長に委ねているのは事前検閲となります。以下の記述は見直しが必要です。

■資料を提出しようとする構成員等及び参考人は、遅くとも当該資料を提出する回の会議が開催される24時間前までに、消費者委員会事務局を通じて他の構成員等に事前に提供し、⇒4. 資料の提出(2)

■規定する期限までに資料の提供ができない場合は、資料を提出しようとする構成員等及び参考人は、議長たるべき者に当該事由を説明するものとし、議長たるべき者が期限後の提出を認めた場合は、当該資料を会議に提出できるものとする。⇒4.資料の提出(2)

■議長たるべき者は、構成員等及び参考人が提出しようとする資料が、審議事項と無関係であると判断する場合又は当該資料が消費者委員会の品位を損なうものと認められる等の特段の事情がある場合には、当該資料の提出を認めないことができる⇒4. 資料の提出(4)

このような機械的でシステマティックな言論規制は、かつては「官僚主義」と呼ばれました。「24時間前までの提出」を阻むのは、委員等に提供する消費者委員会事務局の会議資料の整理が遅れる場合があることが原因の一つです。

また、委員等が提出する意見・資料の是非を「議長たる者」の判断に委ねるのは「事前検閲」以外のなにものでもありません。こういう記載にも、各界の代表として審議に臨む委員等への礼儀を重んじない「上から目線」の視点が感じられます。

以上の理由から、私たち食品表示を考える市民ネットワークは、今回の消費者委員会「申し合わせ」に厳重に抗議するとともに、一人ひとりの消費者委員会委員に対し、「消費者目線とは何か」「消費者・国民が期待する消費者委員会とは何か」、それを確認した当時の消費者委員会発足時の理念に、いま一度、素直に立ち返ることを切に求めます。

以上

【参考】第165回 消費者委員会本会議資料「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ(確定版)